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Ikegami TECH

2026.02.10

Ikegami TECH vol.52 耐放射線性カメラの特性  ~映像技術で過酷な環境下の作業を支えるために~ Part.1

核物質を取り扱う放射線量の高い環境の作業監視には、放射線に耐えられるように設計された耐放射線性カメラが使用されています。ここでは、耐放射線性カメラを構築する上で重要な光学部品と撮像素子について2回に分けて紹介します。
最初に、放射線や耐放射線性カメラの環境について説明します。

【放射線の種類】

放射線とは放射性物質(ウランやトリウム等)から発せられる、高いエネルギーを持った高速で飛ぶ粒子や波長が短い電磁波の総称になります。代表的な放射線の種類には、粒子のアルファ線(α線)、ベータ線(β線)、中性子線と、電磁波のガンマ線(γ線)やエックス(X線)などがあります。各々の放射線は図1に示すように物質の透過能力が異なります。

特にγ線やX線は波長が短い電磁波※であるためエネルギーが高く透過能力も強いため、遠くまで影響を及ぼします。耐放射線性カメラでは特に核物質から発せられるγ線に対する耐性が求められます。


図1 放射線の種類
※γ線の波長:1pm(10-12)以下、 X線の波長:1pm~10nm(10-12~10-8)
  参考:可視光の波長:380nm-780nm

【放射線の単位】

放射線の単位として、よく見聞きするものにシーベルト(Sv)とグレイ(Gy)があります。

図2に示すように、グレイ(Gy)は、放射線から単位質量あたりに受けるエネルギー量で定義される物理的な放射線量を表す単位になります。シーベルト(Sv)は、人体の各臓器が放射線の種類(α線、β線、γ線等)や臓器(脳、肺、胃、肝臓など)ごとの影響度が異なることを考慮して算定した放射線量の単位になります。仮にγ線を全身に均等に受けた場合は、1Sv=1Gyとなります。

また、放射線量の表現には、放射線量の強さを表す1時間あたりの放射線量の表現(Sv/h、Gy/h)と、放射線の累積値で表す集積線量(Sv、Gy)の2つが使われます。
耐放射線性カメラの評価ではγ線への耐久性として集積線量(Gy)が用いられています。
なお、放射線に関連した単位としてベクレル(Bq)がありますが、これは放射性物質(核物質)が放射線を出す能力(放射能)を表す単位で、「1秒間に原子核が壊変※する数」を表しています。壊変ごとに放射線を出すことから、放射性物質が放射線を出す強さを表す単位としても用いられています。

※壊変:原子核が放射線を出して別の原子核に変わる現象のこと


図2 放射線の単位

【身の回りの放射線被ばく線量】

ここまで、放射線の種類や単位を見てきましたが、人体に影響を与える放射線量が気になるかと思います。

図3は、国の研究機関である量子科学技術研究開発機構の放射線医学研究所が公開している「放射線被ばくの早見図」になります。

この一覧によれば、日本の自然放射線量は年間で約2.1mSv、胃のX線検査で数mSvですから、一般に生活している場合、年間の集積線量(被ばく線量)は数mSvと予測することができます。


図3 身の回りの放射線被ばく線量*

【耐放射線性カメラの環境】

さて、耐放射線性カメラが設置される環境はどのくらいの放射線量の環境なのでしょうか。

核物質を取り扱う高い放射線量の環境の一つに、使用済み核燃料の再処理で生じる高レベル放射性廃棄物の廃液を、溶かしたガラスと混ぜて固めガラス固化体にするプラントがあります。ここで製造された直後のガラス固化体表面の放射線量は約1,500Sv/h、表面から1mの位置でも約110Sv/hと言われており、私たちが1年間に被爆する放射線量の10万倍以上をわずか1時間で超えてしまう、極めて高い環境になります。

このような過酷な環境の作業監視には高い放射線量の中でも安定した映像を提供出来る耐放射線性カメラが欠かせません。

次回は、耐放射線性カメラの構成や光学部品、カメラヘッド部の撮像素子などについて説明します。

*出典:量子科学技術研究開発機構のHPより
https://www.qst.go.jp/uploaded/attachment/22422.pdf

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