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Ikegami TECH

2023.08.23

Ikegami TECH vol.22 無駄なトラフィックを削減 ~データが欲しいのは誰なのか?~

無駄なトラフィックを削減 ~データが欲しいのは誰なのか?~

今回は、池上通信機のセキュリティ用カメラシステムで使用される、データの転送処理技術を解説します。
アナログからデジタルへの移行にあたって、真っ先にIP化が進んだこの業界ですが、今やセキュリティカメラと言えば「ネットワークカメラ」とも言えるくらいです。こうしたセキュリティシステムでは、ネットワーク活用の工夫(技術)として、マルチキャスト通信で使われる「IGMPスヌーピング」が効果を発揮します。ここでは、それらの背景から、仕組みについて取り上げてみます。

図1 セキュリティ向けネットワークカメラ

さて、セキュリティ用途という点で、特徴を洗い出してみましょう。池上通信機の事業分野の中でも、他のソリューション(放送・メディカル・検査/画像処理)と比較して、撮影する側の「カメラ台数が多い」ことが言えます。具体的には、数十どころか数百台といった単位になることがあります。また、表示する側の「モニター台数も多い」ことが挙げられます。さらに、「画面分割表示」により、一台のモニターに複数映像を表示させる使い方もされます。

図2 画面分割表示のシステム例

これらシステム全体を考えてみると、膨大な数の映像データを取り扱わなければならなりません。
近年、H.265(HEVC)など動画圧縮技術の進化や、10GbE(有線)・Wi-Fi 6(無線)などの高速イーサネット規格の普及もあり、より多くの映像が伝送できるようになってきました。しかし、いかに立派な高速道路の本線が整備されようと、ジャンクションや料金所の整備が悪ければ渋滞が発生してしまうように、情報伝送において「ネットワークスイッチでの処理」が正しくできなければ、いくら高圧縮・大容量データが本線(ケーブル)へ流せたところで、映像を遅延なく正常に伝送する目的は達成できません。そのため、いかに無駄なトラフィックを削減し、カメラ映像という比較的大きなデータをネットワーク内で交通整理できるかが、重要なポイントとなります。

放送でも、セキュリティにおいても、IP化された映像システムでは「転送」により、映像配信元(カメラ)の負荷を下げる目的で、マルチキャストが多く使われます。「マルチキャスト通信の技術」はバックナンバー「Vol.15 温故知新 ~放送設備のIP化を考える~(1)」に詳細がありますので、合わせてご参照ください。

マルチキャストネットワークの中で「IGMPスヌーピング」を使うことで、無駄なトラフィックを削減することができます。スヌーピングとは、日本語で「のぞき見」と直訳できるのですが、この機能を使うとデータの中身をのぞき見し「誰がデータを欲しがっているのか」を知ることによって、必要な場所だけにデータ(カメラシステムでは映像)をお届けできるのです。カメラ映像を[C]と[D]のクライアント(モニター)が要求している例をあげて、まずは、IGMPスヌーピングが無い場合の動きを見てみましょう。(図3)

図3 IGMPスヌーピングが無い(無効)なシステム

[C]・[D]のクライアントのみが、カメラ映像を要求しているので、[A]・[B]では受信処理を行いません。しかし、本来送らなくても良い[A]・[B]にも転送がされてしまうため、余計なデータとなっています。これは、「誰がデータを欲しがっているのか」が分からないため、とりあえず全クライアントにデータを送った上で、必要なクライアントだけ受け取ってもらおうという動きになっています。
続いて、IGMPスヌーピングが有効な場合の動きを見てみましょう。(図4)

図4 IGMPスヌーピングが有効なシステム

IGMPスヌーピング機能により、要求されていない[A]・[B]にはデータの転送がされず、無駄なトラフィックが無くなりました。
実際の大規模セキュリティカメラシステムでは、このようにIGMPスヌーピング技術をはじめとしたトラフィック制御を取り入れることで、遅延の少ない映像伝送を実現しています。近年、IoTやセンシング技術の導入といったDX化推進が盛んになってきました。AI(人工知能)を用いた画像処理や、5Gなどのさらなる技術革新が進む中で、活用が期待される映像データをいかに無駄なく伝送できるかといった課題は、市場全体で重要度が高くなっていくことでしょう。今後も、このようなベース技術を活用した上で、時代の変化に寄り添ったシステム構築を追求していきます。

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