Ikegami TECH

2023.11.08

Ikegami TECH vol.25 放送用カメラの機能をひも解く ~現場発想で新たな機能に~

放送用カメラの機能をひも解く ~現場発想で新たな機能に~

放送用システムカメラには、一般的なムービーカメラ等では使われないような独特の機能があります。なかにはもともと開発された当初から意味合いが変わって異なる使い方が主流となっているものや、開発者の意図しない使われ方をされて新たな発見をするようなこともありました。今回は、普段は見えない機能や、現場運用において従来機能を駆使して生まれたアイデア等についてお話します。

放送用カメラでは、いわゆる“映える”画とかではなく、忠実で自然な画を再現する必要があります。このため、まず行うのはレンズやプリズムなどの光学系において原理的に発生する現象に対する補正です。光学系のMTF(Modulation Transfer Function)や、センサー前面に挿入される光学ローパスフィルター等によって失われる高周波成分を補正するアパーチャー補正、プリズムで三原色に分ける際に表現できなくなる色を再現するためのリニアマトリクス補正、画面全面のレベルの均一性を揃えるためのシェーディング補正等が上げられます。

これらは、レンズとの組み合わせによって僅かな差があるため、使用するレンズごとにそれぞれの補正を行う必要があります。これについてはレンズを付け替えた時にレンズのIDを読み取り、補正値を切り替えるレンズファイル機能を備えております。これらの機能は、使用するレンズが決まっていれば、製造過程においてメーカー側でセットされることが多く、エンドユーザーが意識することはあまりありません。

放送用カメラの独特の機能としてガンマ補正というものがあります。(一般のムービーカメラでも固定値として埋め込まれているものもあります)
ガンマ補正は、かつての家庭用の受像機がブラウン管だった時代の名残です。
ブラウン管は黒から白までの映像レベルがリニアに変化せず二次曲線上に変化する特性をもっています。(図1)

図1

本来、これは受像機側でリニアに変化する様にブラウン管の発光特性の逆特性で補正する必要がありました。
ですが当時、アナログ回路で構成されていた受像機はできるだけ回路を減らして安くするため、送り側、すなわちカメラ側であらかじめ逆補正しておくことを取り決めたのです。このため、カメラから出される信号は今でもブラウン管の発光特性の逆特性の非線形信号となっています。液晶が主流の現在となっても、放送方式を変えるわけにはいかず、この機能はカメラ側にそのまま残っています。
この非線形のガンマ曲線は、元々Y=X0.45という補正曲線でした。このべき乗の値を少し変化させることにより画全体の色のグラデーションが微妙に変わるため、今ではこの回路を敢えて微妙に変化させることにより、シネマの様な質感にしたり、ぐっと色がのったビビットな映像にしたりという使い方をしたりしています。
こういったもともとの機能の意味合いと全く違った使い方をしている例が幾つかあります。

1990年代ハイビジョンカメラの黎明期、カメラの解像度が上がったため、俳優さんのしわが目立つとの話が持ち上がり、某化粧品メーカーがハイビジョン撮影用のファンデーションを開発したりしました。Ikegamiでも、予てより開発していた特定の色のみを強調することのできるコントロール・エッジ・エンハンスメント技術を用いて、肌色の部分のみソフトにする機能、通称“スキンDTL”を開発しました。ちなみに当社はこの技術により、3度目のエミー賞をいただいています。

本来DTL機能は、輪郭をくっきりさせるために作られた機能ですが、この例は補正をマイナス方向に効かせるという当初の開発時には思いもしなかった機能となりました。

ちょっと変わったところでこんなエピソードもあります。
もともとは、強い光が入った時にレンズ内で起こる乱反射を補正するための機能としてフレア補正というものがあります。画面内に入る光の総和が増えると黒のレベルが浮き上がってしまうことを抑える機能です。
かつて甲子園球場では野球が7回くらいになると、球場内の屋台で一斉にいか焼きを焼きはじめて、球場内にいか焼きの煙が漂い、なんとなく白っぽい画になってしまい困っているというお話がありました。
このフレア補正を使って“イカ焼きモード”という機能を付けるというアイデアも上がりました。あまりにもニッチなため機能化はされませんでしたが、運用ではフレア補正がうまく応用できたようです。今では、甲子園球場も禁煙になり、イカ焼きも姿を消しているようです。

Ikegamiは時代によって変化する様々な要望に対して、放送の現場の方々に寄り添って潜在的なニーズを「技術のチカラ」でカタチにしてきました。

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