Ikegami TECH

2024.03.13

Ikegami TECH vol.29 防振カメラのしくみ ~上空からヘリ映像やマラソン中継でもブレない映像を~

防振カメラのしくみ ~上空からヘリ映像やマラソン中継でもブレない映像を~

図1

揺れる車窓から外の景色を撮影して、映像がブレた経験のある方も多いと思います。一方で、アクションカメラやマラソン中継、ヘリコプター空撮映像では、視聴者にあまり振動を感じさせない映像になっています。今回は、これらの揺れないカメラの仕組みについてお話しします。

カメラが揺れるとレンズに入射する光の角度が変わり、撮像素子上の結像位置が変わってしまい映像がブレてしまいます。この光の角度変化をレンズ内で打ち消す方法があります。図1のようにレンズ内に補正光学系を入れ、レンズの傾きに応じ補正光学系をシフトさせ、光の角度を変化させることで結像ズレを補正する方法です。この方法はレンズ内で完結するため、対応したレンズに変更するだけで実現できます。ただし、補正光学系の稼働範囲が狭いため、大きく揺れた場合、補正しきれないことがあります。

結像がブレた場合、図2のように、ブレ方向に合わせて、撮像素子から映像を切り出す位置を変え、撮像素子の出力の中心がブレないようにする方法もあります。この方法は、物理的な可動部分が無く、モーターなどが不要であり小型化することが可能なため、アクションカメラなどに使用されます。ただし補正する分、撮像素子に対して切り出しサイズを小さくする必要があり、出力映像がレンズの望遠側に寄ってしまいます。また出力映像に関わる画素数が減少し、解像度が失われるデメリットもあります。これを防ぐため、サイズの大きな撮像素子を使い、補正の影響で画素数が減らないようにするものもあります。ただし、大きいサイズの撮像素子に結像させるためには、レンズも大型にする必要があります。また、ローリングシャッター撮像素子では切り出すエリアによって露光タイミングが違うため、画面中心は動かないが全体に波打つような揺れが残ることがあります。

図2

図3

カメラの振動そのものを打ち消して、ブレなくする方法もあります。図3のようなハンディ型のジンバルを使い、カメラそのものが揺れないようにします。このジンバルは水平・垂直・回転の3つの補正軸を持ち、振動と反対方向にカメラを動かすことで、ほとんどのブレを抑えることができます。この方法は、カメラの撮像性能をまったく変えないため、画質を優先する撮影には有効です。
ただし、モーターを駆動して補正軸を動かすため、搭載できるカメラの重量に制限があります。図3のようなものだと3kg程度が限界です。そのため、マラソン中継やヘリコプターの空撮に使う大きな望遠レンズを搭載するには、それに合わせた大きなジンバルが必要になります。

ヘリコプターの空撮では、ヘリコプターそのものの振動に加え、時速100kmを超えるスピードの風圧にも耐える必要があります。そのため、ジンバルが2重構造になったものが使用されます。図4は一般的なヘリコプター用のジンバルの構造図です。まず、外側のアウタージンバルで大きな振動を補正し、残った小さな振動は内部のインナージンバルで補正します。これにより、1000m以上の高い高度からの超望遠撮影でも非常に滑らかな、揺れない映像が得られます。

図4

ただし、従来のヘリコプター用ジンバルでは、構造上アウタージンバルに回転軸を設けることができませんでした。このため回転方向のブレはインナージンバルのみの補正となり2重とならず、ヘリコプターの激しい揺れではローリングする振動が残ってしまうことがありました。残ったローリング振動は地平線を撮った場合などに顕著になります。これを払拭するため、近ごろではアウタージンバルにも回転軸を設けた製品もできてきました。図5がその構造です。外部と内部がそれぞれ3軸防振(トータルで6軸防振)となっています。加えて、この防振構造は従来の防振ジンバルで原理的に発生していた、真俯瞰に向けたときのジンバルロックによるアウタージンバルの硬直を防ぐことができます。これによりビル谷間で起こった事件・事故でも、真上から最大ズームで寄った撮影が可能になりました。

図5

池上通信機では、放送局や官公庁のヘリコプター向けに、写真1の6軸防振ジンバルを販売し、災害・事件・事故の初動におけるアルタイムの情報伝達に貢献しています。

SHOTOVER M1

写真1

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