menu

Ikegami TECH

2022.07.15

Ikegami TECH Vol.9  走っている車のタイヤが止まって見える!

走っている車のタイヤが止まって見える!

目の前の光景をより多くの人に届けたり、多世代に伝えることのできるテレビカメラ。
人間の目で見る光景と差を感じないほどにまで技術は発展していますが、テレビカメラには2つの“限界”があります。
それは、撮影する条件によって「空間的」に表現できる細かさの限界と、「時間的」に表現できる限界。
空間的な限界すなわち解像度の限界については、Vol.5*1で「サンプリング周波数」として触れました。
その中で、「サンプリング周波数は原理的に、表現したい周波数の 2倍以上である必要があります。」という話をしました。
では、サンプリング周波数よりもさらに細かい映像を撮像したらどうなるのでしょうか?
図を見ながら考えてみましょう。まず、元の信号よりサンプリング周波数が十分高い場合(図1)
信号を等間隔でサンプリング(a)すると、離散的なデータが得られます(b)。これをなだらかに結ぶとほぼ元の波形となります(c))

(図1)

次に、元の信号がサンプリング周波数より高い場合です。(図2)
図1と同様に等間隔でサンプリング(a)すると、離散的なデータが得られます(b)。しかし、これらをなだらかに結んでも、元の信号には戻りません。それどころか、変な波形に変換されてしまっています。

こういった信号は、「偽信号」や、「折り返し歪み」と呼ばれます。
通常の撮像系では、こういった現象が起きないよう、サンプリングする前に高い周波数が入らないようなフィルタが入れられます。
これは「空間的」な撮像(解像度)限界を表すものです。
ここで、今日のメインテーマの「走っている車のタイヤが止まって見える!」を考えてみましょう。
こちらは「時間的」撮像(動解像度)限界に関わるものです。
テレビカメラは基本的に1秒間に60コマの映像を撮影しています。(撮影方法によって変わります。)CMなどでは、フィルムカメラの時代と同じ24コマや30コマが使われることが多いです。
カメラで回転しているものを撮像した場合、このコマ数と回転数の関係によっては、回転が止まって見えたりします。よく車のCM等で見かける現象です。
では、車のタイヤが止まって見える条件について検証してみましょう。


例えばホイールのスポークが6本のタイヤで1秒間に30コマで撮る場合を考えてみましょう。
このタイヤの場合、1回転する間にスポークの見た目は6回同じように見えます。(下図の様にスポークに青い色をつけると回転していく様子が見えますが実際はこれらの瞬間は同じ絵に見えます。)

1秒間にちょうど5回転したとすると、1秒間に6x5=30回同じ見た目となります。
これを30コマで撮るとそれぞれのコマで同じ映像となり、あたかも止まっているように見えるのです。
このタイミングが少しずれる事でゆっくり回って見えたり逆回りに見えたりします。
タイヤの直径を60cmとすると、タイヤ1回転で走る距離は、円周率×0.6≒1.9mとなります。1秒で5回転となると、秒速9.4m、これを時速に直すとほぼ34Km/hとなります。(この整数倍の時速でも同じような現象となります。)
想像ですが、CM撮りなどでは、タイヤが止まったり逆回りしたりする不思議な現象が起きる速度で敢えて撮影しているのかもしれませんね。

*1 Vol.5はこちらからご参照ください。

関連記事を読む

Contact Us

お問い合わせ

ご希望の要望に合わせてお問い合わせください。