Ikegami TECH
2024.08.21
Ikegami TECH vol.34 映像伝送における光ファイバー技術の活用 ~高い耐環境性で早く遠くへ届ける技術~
映像伝送における光ファイバー技術の活用 ~高い耐環境性で早く遠くへ届ける技術~
今回は、映像伝送システムに用いられる「光ファイバー」を使った技術と活用方法をご紹介します。インターネットの普及により登場したこの技術は、高速・長距離・高い耐環境性から活用されるケースが増えてきました。これらの利点は、池上通信機で多く使われる「映像伝送」とも相性が良いことから、多くのシステムで採用されています。ここでは、実際の活用事例も交えながら紹介します。
光ファイバー技術の歴史と高速化
インターネットでは電話線やLANケーブル、アナログ映像(NTSC)やデジタル映像(SDI)では同軸ケーブルといったように、古くから銅線による「メタルケーブル」が使われてきました。一方で、光ファイバーの歴史はまだ浅く、一般家庭でインターネット接続に使われるFTTH(Fiber To The Home)は2000年代に入ってからサービスが開始されたばかりです。デビュー当初は100Mbps程度でしたが、技術の進化と共に高速化され、1Gbps、10Gbpsと高速伝送サービスが普及してきました。さらに、大量のトラフィックを扱うデータセンターなどでは現在100Gbpsを超え、400Gbpsという規格が使われ始めています。以下に示すのは、光ファイバー規格の代表例です。(表1)
表1:光ファイバー規格の代表例
規格 | 速度 | 規格化年度 |
100BASE-FX | 100Mbps | 1995年 |
1000BASE-LX | 1Gbps | 1998年 |
10GBASE-LR | 10Gbps | 2002年 |
40GBASE-LR4 | 40Gbps | 2010年 |
100GBASE-LR4 | 100Gbps | 2010年 |
400GBASE-LR8 | 400Gbps | 2017年 |
古くから使われるメタルケーブルでは、10Gbps程度が実用限界とされていることから、今後さらなる高速化では光ファイバーによる伝送技術が中心になると言われています。特に、4K・8Kカメラ映像を複数本伝送する場合、数十Gbpsと大容量かつ高帯域な伝送路が必要となりますが、このような用途では光ファイバーの高速性能が発揮されます。
長距離伝送
光ファイバーの特徴として、長距離の伝送に対応する利点も挙げられます。
例えば、同じ10Gbps規格でもケーブル種類によって伝送可能な距離が異なりますが、光ファイバーを使うことで、より遠くへの伝送が可能となります。(図1、表2)
表2:10Gbps規格と最大伝送距離
規格 | ケーブル | 最大伝送距離 |
10GBASE-T | LANケーブル (メタルケーブル) |
100m |
10GBASE-SR | 光ファイバーケーブル (マルチモード) |
300m |
10GBASE-LR | 光ファイバーケーブル (シングルモード) |
10km |
10GBASE-ER | 光ファイバーケーブル (シングルモード) |
40km |
光ファイバーの長距離特性を活かすことで、建屋間を超えた通信や、地底・海底ケーブルを用いた長距離伝送の実現が可能となることから、映像伝送においてもこれらの伝送技術が用いられます。
高い耐環境性能
銅線を使い電気信号をオン/オフさせるメタルケーブルに対し、光ファイバーケーブルではレーザーによる光のオン/オフで動作させる仕組みから、以下の特徴が挙げられます。(図2)
- 電磁波を利用しないため、電磁干渉の影響を受けにくい
- 電気を通さないため、雷を含む電気的な障害を受けにくい
- 金属を使わないため、腐食や酸化による劣化が起きにくい
特に、屋外で使われる高所カメラや、厳しい環境下で使われるプラント監視カメラシステムなどでは、これら耐環境性能の高さを有用に活用しています。
利点を活かしたシステム構築と将来
ご紹介したように、光ファイバーを用いることで多くの特徴を生かしたシステム構成が可能となりました。一方で、メタルケーブルと比較して曲げ・断線に対して弱い、端末処理が困難、コストが高いといったことも欠点として挙げられていますが、構成されるケーブル素材の工夫や高い加工性を実現する周辺機器の充実などにより、導入ハードルは年々下がってきています。
近年は5Gネットワーク普及や生成AI発展などの背景から、光ファイバーを用いたICT技術の進化は今後も急速に進むことが予想されます。池上通信機では、映像伝送を中心にこれらの技術も取り入れながら、製品開発やソリューション展開を図ってまいります。