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Ikegami TECH

2022.10.15

Ikegami TECH Vol.12  算数でひも解くデジタル映像処理(2)

算数でひも解くデジタル映像処理(2)

自然を相手に映像を撮っていると霧の向こう側から見えてくる被写体や、白い雪に同化した白兎など、単純な足し算引き算では中々鮮明に見せることが出来ない様なシチュエーションがあります。ハイビジョンカメラが出始めの2000年初頭ころ、それまでと比較すると格段にキレイになった映像。あまりにくっきり見えるので、くっきり見えない方が良い部分を敢えてソフトにする機能なども開発されました。

今回は、映像の鮮鋭度などを変える、すなわちよりシャープに見せたり、あえてぼかせてみたりする処理について紹介します。
映像の鮮鋭度を変えるには、足し算引き算をする際に時間による映像の変化の要素を加えます。
前回は、信号に数値を足したり引いたりする映像処理でした。今回は、映像信号自体を用いて足し算引き算をしていきます。
少しややこしいので、まずは図形を用いて説明します。

まず、図1を参照ください。元の図形①からちょっとだけ左にずらした同じ形の図形②を作ります。
そしてこれを引き算します。図形の引き算というとピンとこないかもしれませんが、左のエッジの部分は小さいものから多きものを引くのでマイナスに、平坦な部分は同じ図形を引き算するのでゼロに、右のエッジは大きいものから小さいものを引くのでプラスになる図形③が出来るのは何となく理解いただけると思います。
同様に図2では、元の図形①からちょっとだけ右にずらした同じ形の図形④を引き算します。③とは左右対称の⑤の図形が出来ます。

(図3)

次に図3を参照ください。先ほど作った③と⑤の図形を足し算してみると、⑥の図形ができます。

さらに、この⑥の図形を元の図形に足し算すると、元の図形の左端と右端の輪郭を強調した図形となります。ちょうど画面にオーバーレイした文字に縁取りをして見やすくしたようなイメージです。
今回図形で説明しましたが、実際は「ちょっとずらす」というのがポイントです。左にずらすというのは、現時点より早い時間、右にずらすというのは遅い時間にある信号を用いるということになります。
このずらす時間と、最終的に足し算する信号の大きさを加減する事で鮮鋭度の質と量を制御できます。
また、最終的な足し算を引き算にすることで鮮鋭度を減らす、すなわちぼかす方向にすることができます。

時間という要素が加わり少々ややこしいですが、基本的には足し算引き算掛け算で成り立っています。
実際は様々な時間のずれた信号に係数と呼ばれるパラメータを用いかなり複雑な組み合わせで足し算引き算が行われます。
これらは、一般的にデジタルフィルタと呼ばれています。
デジタルフィルタは特定の周波数を強調したり、ノイズを除去したり様々な映像処理で使われます。
理論的には述べてきた通りですが、どのようなパラメータを用い、どのように処理を組み合わせて制御するかがとても重要で、ここは非常に複雑な要素が含まれます。当社には理論的な部分に加え、主観的な映像評価を積み重ねてきたノウハウがあり、映像表現をする方達に愛されている池上トーンを実現しています。

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