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Ikegami TECH

2025.02.12

Ikegami TECH vol.40 途絶えない通信を目指して ~光通信×無線のハイブリッド戦略~

途絶えない通信を目指して ~光通信×無線のハイブリッド戦略~

今回は、主に映像などのデータを届ける手段として、伝送路の冗長化をテーマにシステム構成と重要性を解説します。災害大国と言われる日本では、通信インフラに与えるリスクは重要な課題です。特に、災害時にこそ効果を発揮する、報道や公共安全に関わるシステムでは、その優先度がより高くなります。ここでは、無線通信を融合した構成提案と共に紹介していきます。

信頼性の高い専用線の限界

映像伝送を行うシステムでは、光ファイバーを用いた専用線(具体的には、広域イーサネットや未使用回線…ダークファイバー等)の活用を行うなど、一般的なインターネット回線等と比較して信頼性の高い通信サービスが広く利用されています。これにより、平時は途切れない通信が実現できていますが、残念ながらこういったサービスにも「完璧」といったものはありません。例えば、地震をはじめとした災害が多い日本においては、物理的な損傷といったリスクが存在しています。さらに、近隣の工事ミスによる埋設ケーブル破断といった事故等も一般的な事例として挙げられています。(図1)

図1: ケーブル破綻のイメージ図
無線回線を用いた通信

無線機を用いて、空間を伝送させるという方法が提案できます。具体的には、テレビジョン放送用の映像を目的とした製品としてFPU(Field Pickup Unit)装置や、TCP/IPネットワークのデータ(例えば、複数台の監視用ネットワークカメラ映像等)では無線LANといった機器があり、これらを活用することができます。(図2)

図2: テレビジョン放送で用いられるFPU装置

無線では、ビル屋上や山などの高所に設置して運用されるため、地上で起こりうる災害に対して影響を受けにくいという利点が挙げられます。特にFPU装置については、独自の周波数帯を使用し、基地局には補助電源装置が設置されていることから一般のネット回線を使用した無線装置と比較して大規模災害時に強いという一面を持っています。一方で、有線による専用線での通信と比較すると、通信速度に限界があることから、高画質大容量のデータをそのまま送ることはできず「圧縮技術」を併用させる必要があります。さらに、周波数によっては大雨等の天候の影響により通信速度が出しにくい場合があるため、これらの特性(※)については理解しなければなりません。(表1)

表1: 専用線と無線のメリット・デメリット

通信方式 メリット デメリット
専用線(有線)

・高速かつ安定した通信速度
・大容量データの伝送が可能

・災害(地震)などによる物理的断線のリスク
無線回線 ・災害の影響を受けにくい
・設置場所の柔軟性が高い
・通信速度に制限がある
・天候(大雨等)の影響を受けやすい

※無線では利用する周波数、機器のグレード、伝送距離などによってこれら特性は一部異なります。

専用線×無線の冗長化

専用線(有線)と無線回線は、それぞれ異なる特性を持つことが分かりました。そこで、映像システムの構成として、これら2つを組み合わせた「ハイブリッド構成」を採用することが有効です。このような構成は「冗長化」とも呼ばれます。システム構成例を次に示します。(図3)

図3: 冗長化されたシステム構成例

通常時には、専用線を使用して高画質かつ安定したデータ通信を行い、もし万が一専用線がダウンした場合には、バックアップとして無線回線を利用することで、映像システムが完全に停止することを防ぐことができます。無線回線を使用する際には、データ圧縮や解像度の調整が必要になる場合がありますが、映像そのものが途絶える最悪の事態を回避できる点は大きなメリットです。

利点を活かしたシステム構築と将来

ご紹介したように、複数の伝送方式を活かした冗長化システムは、映像を届けるというテーマに対して有効的な手法と言えるでしょう。また、近年はローカル5Gや衛星通信サービスといった新しい技術も市場に展開され、活用が始まっています。これら無線技術の普及は、今後も急速に進むことが予想されますが、FPU装置等の無線装置は、映像システムの構成において高信頼化の観点から有用です。池上通信機では、映像伝送を中心にこれまでのノウハウと最新の技術を取り入れながら、社会へ貢献していきます。

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