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Ikegami TECH

2023.06.14

Ikegami TECH vol.20 もうひとつの本線映像~ビューファインダー技術について~

もうひとつの本線映像~ビューファインダー技術について~

高品質な映像をお届けする放送用カメラ。放送として送出される”本線映像”と呼ばれる映像には、様々な処理を行っております。そして、この本線の映像以外にもうひとつとても大事な映像系統があります。
カメラマンの本線ともいえるビューファインダー映像です。

暗転の舞台や強い日差しの下など、カメラマンがビューファインダーを使う環境は様々。どのような条件下でも的確なフォーカスや構図を決めなければならず、ビューファインダーには本線映像とは異なる特殊な処理や機能が必要になります。今回は、カメラマンの画作りに関わる「フォーカス」「構図」「被写体フォロー」の3点をピックアップして深掘りしてみましょう。

まずは、カメラマンの意図を表現する“フォーカス”についてです。
最近では、4Kや8Kといった高解像度の映像が身近になってきました。しかし高解像度になればなるほど、カメラマンにとってはフォーカスを合せるのがシビアになってきます。同一のイメージサイズで異なる解像度の場合、高解像度になるほど被写界深度も浅くなるためです。僅かにフォーカスがずれただけで意図と異なる表現になってしまっては、折角の解像度が台無しになってしまいます。これは4K時代特有の課題ではなく、SDからHD、HDから4Kと高解像度化の道を辿る過程で直面してきた課題でした。

このシビアなフォーカスをより合わせやすくするために、その時代その時代で様々な技術で対応してきました。
そのひとつが、フォーカスアシストという機能です。当社のカメラに最初に搭載されたのは2012年(HDK-55)のことです。映像のフォーカスが合うピンポイントの範囲でエッジが視認性良く強調される仕組みです。
ただフォーカスが合ったことをわかりやすくするだけではなく、運用性にも工夫を凝らしています。ずっとエッジが強調されていると煩わしいので、色を変えたり強調されている時間を微調整で対応したりしています。
また、暗部でも合わせやすくしたりするなど、カメラマンをよりサポートするには何ができるかを追求し続けています。

最新のフォーカスアシスト

次に、カメラマンが表現したいショットを正確に切り取る“構図”に関わる仕組みについてです。
最終的な構図は、ビューファインダーと実際の風景を同時に見ながら決めていきます。そのため、機材がカメラマンの視野を遮らないようにしなければいけません。大型のシステムカメラでは、ビューファインダーの位置を出来るだけレンズの光軸に近づけ、良好なカメラワークを実現するとともに、周りの実風景が同時に見やすくしています。

レンズ光軸とビューファインダーの位置関係

構図決めをサポートするのは機構的な面だけではなく、電気的な働きもあります。
基本的に現在のハイビジョン・4Kの放送は16:9の横長映像です。しかし、コロナ禍でソーシャルディスタンスを考慮したことで出演者同士の間隔が広がり、フレームに収まりきらないショットも増えました。
この場合、複数台のカメラでそれぞれの出演者を映し、ワイプ処理で合成する演出があります。
このようなケースでは、最終的に切り出されるエリアにマーカーを表示し、ビューファインダー上で確認できるようにすることで構図を意識しやすくします。

また、最近では放送と同時にSNS等への映像利用も増えてきています。この場合、スマホなどを対象とした9:16の縦長映像を用いることがあります。
縦長映像のみを利用する場合は、カメラを90度回転させて撮影も出来ます。しかし、縦長と横長それぞれの映像が必要な場合は、16:9の横長画面の一部を9:16に切り出して使う事になります。
カメラマンはマーカーを頼りに、縦横両方の構図を気にしながらカメラワークをする必要があります。

16:9のビューファインダーに9:16のマーカーを表示した例

最後に、動く“被写体のフォロー”をサポートする処理です。
曇り空に白いゴルフボール、野球のホームランボールなどよく見失わずに追いかけられるなと思ったことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。もちろんカメラマンの腕による部分も大きいのですが、ビューファインダーの視認性はとても重要です。
ちなみに、プロゴルファーの球筋は打った瞬間にある程度予測がつく一方、アマチュアの大会等は難易度が上がるようです。
かつて白黒画面のビューファインダーしかなかった時代、グリーン上のゴルフボールは輝度成分が近いために両方白っぽく映り見えづらかったため、敢えて緑色の信号を反転させるなどの工夫もありました。
最近のカラービューファインダーは、視認性も上がってきています。同時に、本線系とは別系統でエッジ処理やガンマ処理等をできるようにすることで、動的な被写体フォローが必要な場面の運用性にも考慮しています。
時代ごとのデバイスや技術の進化に伴い、ビューファインダー独特の様々な工夫がなされてきました。より美しい映像作りに加えて、現場の状況が刻一刻と変わる状況下で高い運用性と信頼性が求められる放送用システムカメラ。今後も時代の変化に応じながら、現場に寄り添った工夫を追求していきます。

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