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Ikegami TECH

2024.05.15

Ikegami TECH vol.31 画像の鮮明化 ~見えにくいものを見やすくする技術~ Part2

画像の鮮明化 ~見えにくいものを見やすくする技術~ Part2

前回に引き続き、不鮮明な画像を鮮明化する、基本的なコントラストの改善技術について解説します。
今回は、「ヒストグラム平坦化」について解説します。

【ヒストグラム平坦化】

前回の「濃度ヒストグラム」の項で、「見やすい画像」(視認性の高い画像)とは、
   「画像中の画素の濃度値を広範囲に均一分布させた画像」
と述べましたが、ヒストグラム平坦化は、これをアルゴリズム化したものになります。
つまり、ヒストグラム平坦化は、画像中の画素の濃度値を濃度範囲全体に均一(同じ画素数)に割り当てる変換手法になります。
一つの濃度値に振り分けられる画素数(平均画素数)は、次の式で求められることがわかります。

   平均画素数 =(画像の全画素数)÷(濃度数)

本手法の概要を図1に示します。

図1 画像と濃度ヒストグラム

図1からわかるとおり、変換前の(a)の画素数が少ない濃度範囲(灰色)は、変換後は(b)のように圧縮され、また、(a)の画素数の多い濃度範囲(赤)は、(b)のように伸長されます。つまり、濃度ヒストグラム上で、ある濃度範囲に画素数が集中しているコントラストの低い画像の場合、集中していた濃度範囲が広く伸長され、コントラストが改善された画像に変換されます。
図2に例を示します。

図2 ヒストグラム平坦化の例

図中の累積画素数のグラフは、濃度値0から各濃度値の画素数を累積した値をプロットしたグラフです。
グラフの傾きは各濃度値の画素数になりますから、平均画素数で一定の傾きの直線となります。
この手法では、各濃度値の画素数を平均画素数に一定に割当てることから、例えば、原画像の同一濃度値の画素数が平均画素数を超えていた部分では、どの画素を優先的に割り当てするかが課題になります。
そこで、次に実際に使われている、もう一つのヒストグラム平坦化を見ていきます。

【もう一つのヒストグラム平坦化】

「画像処理ソフトでヒストグラム平坦化を行ったけど、濃度ヒストグラムが平坦になっていない」という疑問を持った方も多いと思います。
図3に一例を示します。

図3 ヒストグラム平坦化と累積画素数

濃度ヒストグラム上の累積画素数のグラフを見てわかるとおり、階段状ですが直線的になり、図2で示した累積画素数のグラフと同じ傾きであることがわかります。つまり、累積画素数のグラフが一定の傾き(平均画素数)になるように、次のように濃度変換をしています。

  • 画素数が少ない濃度分布範囲:濃度値の間隔を細かく割り当てる
  • 画素数が多い濃度分布範囲:濃度値の間隔を広く割り当てる

つまり、ヒストグラム平坦化は、

  「各濃度値の画素数は平均画素数」=「累積画素数の傾きは平均画素数」

と、同等と捉えて処理をしています。この手法は、濃度変換で行えるため処理的負荷が少なく実用的であることから、「ヒストグラム平坦化」としては、こちらの手法が主に使われているようです。

【ヒストグラム平坦化の例】

最後に、不鮮明な画像の改善例を図4、図5に示します。
両図の原画像は、横浜ランドマークタワーから望遠撮影したもので、大気とスモッグの影響により極端に不鮮明な画像となった例になります。原画像では撮影対象が非常に不鮮明ですが、ヒストグラム平坦化の変換後は、両者ともくっきりと浮かび上がり視認性の向上が図られていることがわかります。

図4 ハマウイング
図5 東京スカイツリー

2回にわたり、不鮮明な画像を鮮明化するコントラスト改善技術について解説してきました。この技術は、画像中に埋もれた、わかりにくい対象物を浮き上がらせて見やすくする技術です。きれいな画像を作る技術ではありませんが、視認性を向上する技術として、監視分野や医療分野で活用されています。

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