Ikegami TECH

2024.04.17

Ikegami TECH vol.30 画像の鮮明化 ~見えにくいものを見やすくする技術~ Part1

画像の鮮明化 ~見えにくいものを見やすくする技術~ Part1

監視分野では、遠距離からの望遠撮影による不鮮明な画像の改善や、夜間等の背景の暗闇に埋もれて見えにくい画像の改善に、画像鮮明化技術の活用が始まっています。
ここでは、不鮮明な画像を鮮明化する基本的なコントラストの改善技術について、2回分けて解説します。
第一回は、「画像と濃度ヒストグラムの関係」と「トーンカーブを用いた改善」について解説します。

【画像と濃度ヒストグラムの関係】

画像の濃度ヒストグラムとは、画像の各画素の明るさを示す濃度値(8bitの場合、0~255の値)の分布を、濃度値を横に、各濃度値の画素数を縦にグラフ化したものです。
言い換えれば、「画像中に濃度値x(明るさx)の画素が何個あるか」を示したグラフになります。
図1に濃度ヒストグラムの例を示します。濃度値は、暗(0)→明(255)で表しています。

図1 画像と濃度ヒストグラム

画像の明るさやコントラストを変化させた画像と、対応した濃度ヒストグラムを図2に示します。
上に画像、下に対応する濃度ヒストグラムを示しています。

図2 画像と濃度ヒストグラム

図2から、画像とヒストグラムには次のような関係があることがわかります。

このように濃度ヒストグラムの形状から画像の大まかな特徴を知ることができます。
また、「コントラスト」とは、画像の明るい部分と暗い部分の明るさの比を示しますので、図2の例では、(a)および(b)もコントラスが低い画像になります。
「見やすい画像」(ここでは視認性の高い画像)を図1と仮定したとき、図2の濃度ヒストグラムと比較すると、濃度値の分布が広範囲であることがわかります。このことから、「見やすい画像」とは、「画像中の画素の濃度値を広範囲に均一分布させた画像」、言い換えれば、コントラストを改善することで「見やすい画像」に変換できる、と推測できます。
では次に、コントラストが低い画像の改善手法を見ていきます。

【トーンカーブを用いた改善】

代表的なコントラストの改善手法に、トーンカーブ(濃度変換曲線)を用いた強調(変換)があります。
トーンカーブのグラフを図3(a)に示します。
横軸が入力の濃度値、縦軸が出力の濃度値になります。
このトーンカーブをS字(図3(a)の赤の曲線)にすることで、図3(b)に示す濃度ヒストグラムの濃度範囲[a,b]を、図3(c)の濃度範囲[a',b']に伸長された濃度ヒストグラムを得ることができます。
これにより、コントラストが改善され、見やすい画像が得られます。

図3 濃度ヒストグラムの伸長

このトーンカーブを用いてコントラストの改善を図る場合、図3(a)に示す濃度ヒストグラムの画素数が集中して分布している濃度範囲[a,b]を指定して、S字曲線を設定する必要があります。
図4に例を示します。コントラスト改善に用いたトーンカーブ(S字曲線)を、濃度ヒストグラム上に重ねて表示しています。

図4 トーンカーブを用いたコントラスト改善例

トーンカーブを用いる場合は改善対象とする濃度範囲を調べてなくてはなりません。
画像ごとに細かな調整が出来るメリットはありますが、画像が変わるたびに濃度範囲を調べ直さなければならないデメリットがあります。

次回は、濃度範囲を調べなくてもコントラスト改善が行える「ヒストグラム平坦化」を解説します。

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