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Ikegami TECH

2023.07.12

Ikegami TECH vol.21 暗闇だけでない、見えないものを見られる技術! ~赤外線カメラについて~

暗闇だけでない、見えないものを見られる技術! ~赤外線カメラについて~

ここ数年のコロナ禍で、体温測定用のサーマルカメラを多く目にする機会がありました。サーマルカメラは、熱のある物体から発生する赤外線を映像化するものです。それ以外でも、赤外線を映像化するカメラは様々な用途で使われています。今回は、赤外線カメラの種類と使われ方についてお話しします。

図1に光の波長を示します。紫から赤までの波長は人が見えるので可視光と呼ばれます。可視光で一番波長の長い色は赤ですが、それよりも外側の光なので赤外線と呼びます。赤外線は、その特徴や運用目的から波長ごとにNIR、SWIR、MWIR、LWIR に分けられます。

図1

[近赤外線(NIR)]
赤のすぐ外側の波長(0.78~1μ)は、近赤外線(Near Infra-Red) と呼ばれます。この波長の光は、可視カメラのCMOSイメージセンサーで簡単に捕らえることができるため、またレンズも可視カメラと共通化が可能なため、
写真1のような監視カメラで使われることが多いです。夜間に人の目には見えない、近赤外線LEDライトを併用することで、気づかれず撮影することが可能です。ただし、市販のCMOSカメラでも近赤外LEDライトの発光を特定できる場合があるため、撮影場所が知られたくない監視では使われません。

写真1:当社近赤外LED付き監視カメラ

この波長の光は、皮膚の薄い部分を透過できることから、医療用にも応用されています。また、ICG(インドシアニングリーン)などの薬剤を投与することで、血流やがん細胞を近赤外光に蛍光させ、それを写真2のようなカメラで捕らえて手術を行う方法が実用化されています。

写真2 MKD-800IR近赤外可視光カメラ

ICGでの蛍光映像

[短波赤外線(SWIR)]
1~2.5μmの波長は、短波赤外線(Short wavelength infrared)と呼ばれます。この波長では被写体によっては、人の見た目とは違う反射をするものがあり、それを捕らえるカメラが分析に使われることがあります。例えば、塩と砂糖は可視光のもとでは同じ白ですが、写真3のように、SWIRだと全く異なる見え方をします。この性質を使い、人の目には区別のつきにくい物質の分析に使われます。また薄いフィルムを透過するため、表面を覆われた物の内部構造検査に使われることもあります。同様な検査にX線を用いる方法がありますが、SWIRはX線と違い被爆の心配がありません。

可視カメラ

SWIRカメラ

写真3 可視カメラとSWIRカメラ(左:砂糖、右:塩)

[中赤外線(MWIR)]
3~5μmの波長は、中波赤外線(Mid wavelength infrared)と呼ばれます。この波長で使われるカメラは、被写体を反射光ではなく熱源として捉えます。そのため、人の顔の表情や、書かれた文字を映すことはできません。しかし、光のまったく無い暗闇でも被写体を映像化することができます。MWIRカメラでは、ノイズの影響を少なくするため検出器(イメージセンサー)を-190℃以下に冷却するものが多いです。この冷却には、スターリングクーラーが使用されますが、スターリングクーラーは原理的に寿命(8,000h~10,000h)があり定期的な交換が必要です。冷却型の検出器(イメージセンサー)は、非常に感度が高いため、長焦点距離のレンズと合わせて、写真4のように数十キロメートル離れた場所の監視も可能です。ただし、価格も非常に高いため、警察・消防・海保・防衛など重要な監視用途で使われるケースがほとんどです。最近では、冷却温度が-120℃程度の温度で動作するHOT(High Operational Temperature)モデルが開発され、スターリングクーラーの寿命も20,000hを超え、ランニングコストを下げることも可能になってきました。

広角端

望遠端

写真4 MWIRカメラ広角端と望遠端の比較

画像提供:RP Optical Lab社
https://rp-optical-lab.com

[長波赤外線(LWIR)]
8~14μmの波長は、長波赤外線(Long wavelength infrared)と呼ばれます。MWIRと同様に、被写体を熱源として捉えます。体温測定用に使われるのもこのタイプです。検出器(イメージセンサー)に冷却器を使わないですむため、コンパクトな形状が可能であり、ランニングコストも安いので昼夜を問わず長時間使われることが多いです。写真5のように、可視カメラではレンズやCMOSセンサーのガラス面の反射で、ハレーションを起こして見えなくなってしまう太陽が写り込むような場面でも、周囲を映すことができるため自動運転用のセンサーとして使われることもあります。

可視カメラ

LWIRカメラ

写真5 LWIRカメラ太陽フレアの除去イメージ

画像提供:Fukuro Vision
https://fukurovision.co.jp/product/

ただしLWIRの検出器(イメージセンサー)は、MWIRに比べ感度が低いため、よりF値の小さい明るいレンズが必要となります。長焦点距離でF値の小さいレンズは大型で高価になるため、全体の価格がMWIRと逆転してしまいます。そのため、LWIRは近距離用に使用される場合が多いです。
池上では、NIRの監視用・医療用カメラ から、警察・消防・防衛向けのMWIR、LWIRカメラまで、人には見えないビジュアルを捕らえることのできる赤外線カメラを販売し、社会の安全、安心や医療現場において技術のチカラで貢献しています。

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