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Ikegami TECH

2022.12.15

Ikegami TECH Vol.14  モニターの“表示デバイス”種類やその特長は?(2)

モニターの“表示デバイス”種類やその特長は?(2)

前回はテレビやモニターの主な表示デバイスの種類についてご説明しました。今回は表示デバイスの主な“評価指標(キーワード)”について考えてみたいと思います。
主な指標(キーワード)は、輝度(明るさ)、コントラスト比(白と黒の差)、解像度(信号フォーマットにあった画素数)、色再現(色の忠実さ)、階調(映像レベルの細やかさ)、動画応答速度(目に残像が残らない速さが望ましい)、画面サイズ、消費電力 などが考えられますが、その中でいくつかポイントを絞って説明します。


まず表示デバイスとしての大前提ですが、ブラウン管(CRT)もフラットパネル(FPD)デバイスである液晶や有機ELも、表示方法はすべて“並置加法混色”と呼ばれています。“並置加法混色”とは、下図のように表示面にRGB画素が規則的に縦横配列されていて、加法混色(光の三原色)で表現する方式になります。

2-1 主なRGB画素配(ライン配列の一例)

2-2 加法混色

◎◎輝度(明るさ): 明るさの単位はカンデラ(cd/m2)あるいはニット(nit, nits)で表わしますが、放送業務用では通常100-120cd/m2が標準輝度(白)で、ブラウン管、液晶、有機ELとも同様です。 また、さまざまな作業(視聴)環境があり、スタジオ制作・編集等は適正な明るさの部屋で作業できますが、ロケ等フィールド(屋外)では太陽光の影響などで、例えば400-600cd/m2等 高い輝度でないと視認し難くなるため環境の明るさに負けない輝度が必要になります。

◎◎コントラスト比(白と黒の差): 映像レベルにあった明るさ(白)と同時に安定した黒の表示が重要です。前回の説明で表示デバイスが自発光か、そうでないか記述しましたが、自発光の場合、映像信号等入力があったところだけ光り、ないところは“黒”で光りません。コントラスト比は、白:黒 で表しますが、自発光の場合、数万~数十万:1という数値が得られます。
一方、液晶のように透過光の場合は、液晶セルの構造・動作上、完全にバックライト光を閉じられないため僅かに黒も光ってしまい、放送業務用でも一般的に“1000~1500:1以上”という値になります。例えば 白が300cd/m2の場合、黒は0.2cd/m2で黒も僅かに光ります(放送業界ではよく“黒が浮く”と表現します)が、通常映像制作に当たって特に支障にはなりません。

◎◎解像度(信号フォーマットにあった画素数):HD(ハイビジョン 1080i)放送の1枚の映像の画素数は水平1920x垂直1080で構成されているので、液晶、有機EL等 FPDパネルは1920x1080の画素(Full HDと呼ぶ)があれば劣化のない(ドットバイドット)映像が表現できます。 またUHD(4K)放送の場合、この1枚の映像の画素数は水平3840x垂直2160になり、水平垂直ともHDの2倍になるので4KテレビでHD放送を見る場合、HDの1画素が4Kテレビの2x2画素で構成されることになります。 またHDテレビ(受像機)ではHD画素より少ない画素のパネル(例えば、WXGA 1366/1280x768)を採用したものもたくさんあります。これは、ドットバイドットではないのでスケーリングという処理で1920x1080→1366/1280x768に変換して表示します。現在の放送業務用モニターでは映像品質の監視という目的があるため、ほぼFull HDパネルが採用されています。

◎動画応答速度(目に残像が残らない速さが望ましい): まずブラウン管(CRT)ですが、これはインパルス発光といって電子ビームがRGB蛍光面に当たった瞬間だけ光ります。その残像時間はRGB蛍光体の特性にもよりますが大体1~3ms程度です。
HDフォーマットは1秒(s)間に60コマ、すなわち1コマは16.7msですからブラウン管の応答速度は1/5以下で非常に速いことが判ります。
一方フラットパネル(FPD)である液晶や有機ELはホールド発光で、有機ELの場合、応答は1msよりはるかに速いのですが、液晶は少し遅くて一般的な応答は大体10ms以上あります。 冒頭にも述べたように液晶は幅広い用途で使用されていますが、速い映像の動き、例えばテレビ番組のエンドロールなどを見ると少し残像(動画ぼやけ)を感じることがあります。 この残像は表示デバイスの特性と相まって視覚的に網膜の蓄積効果があるといわれていますが、液晶の残像(動画ぼやけ)を抑制するために、フレームに黒を挿入し視覚的に残像をリセットする方法や、フレームを2倍、4倍に変換する方法などが実現されています。

放送業務用モニターは、その用途に応じてマスターモニターや素材用モニターなど種類がありますが、入力された映像信号(素材)を忠実に再現することが求められるため、性能はそれ以下でもそれ以上でもいけないというのが基本です。主な“評価指標(キーワード)”は一部の説明となりましたが、FPDテレビ、業務用モニターを見るときにこれらのキーワードを少し意識して見てみると面白いのではないでしょうか。

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