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Ikegami TECH

2023.04.12

Ikegami TECH vol.18 暗闇から研ぎ澄ました光の中へ~高感度カメラについて~

暗闇から研ぎ澄ました光の中へ~高感度カメラについて~

ひと昔前の一般的なビデオカメラでは、夕暮れになると人の目には見えるのに、カメラでは撮影することができませんでした。暗い場所で撮影するには、電子増倍管やイメージインテンシファイヤといった、光電子を増幅する非常に高価で取扱いが難しいイメージセンサーが必要でした。それが今や、普通のカメラでも撮影できる時代です。今回は、どのようにして、カメラは高感度化してきたのかをお話しします。

図1.CMOSイメージセンサー受光の構造

現在主流のCMOSイメージセンサーは、受光素子(画素)が集まったものです。そのため、受光素子ごとに入射する光を増やせば感度が上がります。その方法としてオンチップマイクロレンズが考案されました。イメージセンサーには、受光素子で電気信号に変換した電荷を運ぶ電極が必要ですが、電極や遮光膜に当たった光は信号に変換されず無駄になります。
そこで、ひとつひとつの画素ごとにマイクロレンズを設け、電極や遮光膜に当たり無駄になる光を受光素子に導く方法が考えられました。(図1参照)




図2.裏面照射型イメージセンサーの構造

さらに、電極と受光素子の位置関係を反転し、電極を受光素子の下部に配置することで電極の遮光膜を不要にし、受光素子へ到達する光を増やす裏面照射型のイメージセンサーも考案されました。(図2参照)

図3.2/3型とフルサイズ35mm型素子の比較

近年では、1枚のシリコンウエハら大きなサイズのイメージセンサーを作ることができるようになったので、ひとつひとつの画素サイズを大きくし感度を上げる方法も行われています。例えば、放送用2/3型HDセンサーに比べはるかに大きな画素サイズを持つ高感度センサーが実現されています。
放送用2/3型HD画素(1920×1080)センサーの画素ピッチは5μmですが、フルサイズ35㎜(35㎜×24㎜)のエリアに19μmピッチ1920×1080画素を配置し、2/3型に比べ1画素あたり14倍以上の画素面積を持つセンサーです。画素面積が大きいと光をたくさん集めることができ、高感度にすることができます。(図3参照)

ただし、イメージセンサーサイズが大きいとレンズも大きくする必要があり、弊害が出る場合があります。レンズのF値が小さいほどカメラが高感度になりますが、望遠レンズでF値を小さくするためにはレンズの前玉を大きくする必要があります。
例えば、右の写真は、現在市販されている最大クラスの35mmレンズですが、これの焦点距離500㎜での水平画角は4.12°となります。
一方、焦点距離500㎜レンズを使用した場合、2/3型イメージセンサーの水平画角は1.1°となり、フルサイズ35㎜センサーの約4倍の距離から同じ被写体の撮影が可能になります。すなわち望遠撮影ではセンサーサイズが小さい方が有利となります。ところがセンサーサイズが小さいと感度は低くなりがちなため、望遠と高感度の両立は現在でも大変難しいことなのです。

高感度化のアプローチとして、センサー出力のノイズを減らす方法もとられました。センサー出力のノイズが少ないほど、後段で電気的に増幅しても影響が少なくなります。
以前のCCDイメージセンサーではアナログアンプとA/D変換器はセンサー外部にあり、後段の回路で信号増幅するとイメージセンサーの出力アンプで発生するノイズや途中の伝送路で混入するノイズも増幅してしまいました。近年のCMOSイメージセンサーではセンサー内部にアナログアンプとA/D変換器を持たせることができ、出力アンプや伝送路でのノイズ混入を防ぐことができます。(図4参照)

図4.各センサー出力のノイズ軽減イメージ

この他、デジタル画像処理によるノイズリダクション(NR)も可能になりました。代表的な処理は、2D(2次元)NRと3D(3次元)NRです。それぞれ一長一短があるため、組み合わせて使用されることが多いです。
2DNRは1フレーム内の映像によるノイズリダクションです。隣接する点どうしの映像は似ていることから、ある点の周辺を平均化し、平均から外れたものをノイズと認識して除去する方法です。動きのある被写体に強いという特性を持っていますが、隣接する点どうしが大きく異なる被写体の輪郭部分や細かい部分がぼやけて見えることがあります。
3DNRとは複数のフレームによるノイズリダクションです。フレーム間のノイズに相関関係が無いことを利用して、相関の無い物をノイズと認識して除去する方法です。動きの無い部分には効果が高いですが、動きのある部分がぼやけて見えることがあります。
これら、様々な感度アップ方法を駆使することで、現在の高感度カメラでは夜間の動画撮影が可能になりました。
以下にその例を示します。十数年の間に、みちがえるほどの高感度が簡単に実現されるようになりました。
一般的に解像度と感度は相反関係にありますが、解像感を落とさずにいかに感度を上げるかが各メーカーのノウハウとなります。

※2006年度と2021年度開発のカメラの高感度映像比較動画は以下URLよりご覧いただけます。
UHL-F4000 4K / HD マルチパーパスカメラ | Ikegami

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