Ikegami TECH

2023.12.13

Ikegami TECH vol.26 オフラインでも正確な時刻同期 ~時刻合わせは宇宙から~

オフラインでも正確な時刻同期 ~時刻合わせは宇宙から~

今回は、池上通信機で放送/セキュリティ/メディカル/検査・画像処理といった分野を問わず、各機器で使われる「時刻合わせ」をご紹介します。例えば、セキュリティ分野で「実際の撮影時間」と「録画時間」がもしもずれていたら、監視カメラシステムとして成り立ちません。ここでは、インターネットの接続有無や人工衛星を使った技術に触れながら、時刻同期環境をどのように構成するのかを取り上げてみます。

■長波を用いた電波時計

時刻合わせといえば、身近なモノで電波時計を思い浮かべる人は多くいるでしょう。家電量販店の壁掛時計や腕時計売り場では、「電波対応モデル」といった広告により、手動での時刻合わせが不要であるとアピールされている様子を見かけます。現在の日本では、東日本向けに福島県(40kHz)および西日本向けに佐賀県(60kHz)の2つの送信所から長波帯の電波(標準電波/JJY)が出されています。電波時計は、国内においてどちらかの電波を受信し、自動で合わせる機能があることで、正しい時刻に合わせることができるのです。
しかし、この方式にはいくつか欠点があります。まず、送信局側の都合で運用休止期間が発生することです。例えば、定期的なメンテナンスで電波を停止することや、災害による影響が挙げられます。実際に、2011年の東日本大震災では福島県の送信所が1ヶ月以上という長い期間停止してしまいました。また、建物の中や地下では受信ができない点も挙げられます。世の中には、これらの補完として標準電波を再送信する機器も存在しますが、長波という周波数帯の特性からアンテナが大きくなることや、コスト面からこれらを用いたシステムはあまり現実的と言えません。

■インターネット上の時刻サーバーを用いたNTP

パソコンやインターネットが一般にも広く普及した21世紀に入り、NTP(Network Time Protocol)というものが登場しました。これは、インターネット上にある、時刻サーバーと呼ばれるものがNTPというルールに従って常に正しい時刻を送出し続け、これらにアクセスすることで時刻が合うという仕組み(図1)で、身近なものではスマートフォンがこの技術を用いています。電波時計のように専用の周波数ではないため、既にスマートフォン等に搭載されている5GやWi-Fiといった通信モジュールをそのまま使うことから、機器の小型化にも役立ちます。

図1:インターネットの時刻サーバーを用いる汎用機器

さて、ここまでは民生品をはじめとする一般的な機器でのお話でした。次は、池上通信機が展開するプロダクトやシステムを踏まえて考えてみましょう。我々が展開するものは、それらの用途やセキュリティリスクの観点からネットワーク(IP)技術は使うが、インターネットに接続しないオフライン(クローズドネットワーク)での構成が多く見られます。そうなると、便利なインターネット上のNTPサーバーへアクセスすることができません。それでは、どのようにして時刻同期を行うのかを取り上げてみましょう。

■GNSSを用いた時刻同期とNTPの組み合わせ

GNSSはGPS(米国)をはじめ、Galileo(ヨーロッパ)やQZSS(日本)による衛星測位システムです。(GPSが有名なため、実際はGNSSのことがGPSと呼ばれることも多くあります)一般的に「位置情報を取得するためにあるもの」として地図などで活用されていますが、これらは衛星がどこにいるのか、電波を発射した時間がいつなのか、という2つの情報を組み合わせることで成り立っています。つまり、GNSSからは「正確な時刻」が取得することができるのです。GNSSはインターネットと関係なく(衛星から一方的に受信をするのみ)、時刻も正確(10億分の1秒単位)で良い手法と言えます。
しかし、カメラをはじめとした各ネットワーク機器全てに個別のGNSSを搭載するのでは、コスト面のほかGNSSが届かない箇所で不都合が生じます。そこで、「GNSS×NTPの組み合わせ」が用いられます。一台の機器がGNSSを受信し、これを基準としたそのシステム専用でNTPを利用した「時刻サーバー」を建てます。各機器はこのサーバーに時刻を見に行く流れによって、システム全体が同一の時刻に合うという仕組みです。ネットワークを使うことから、有線はもちろんのこと、Wi-Fiやローカル5Gと組み合わせることで無線でも時刻同期システムを構築することができます。(図2)

図2:NTPと時刻サーバーの組み合わせによるシステム例
PTPとこれから

NTPが広く普及した現代ですが、最近はPTP(Precision Time Protocol)という単語もよく耳にするようになってきました。ネットワークを使うこと自体NTPと同じですが、PTPはネットワーク経路上の遅延などを補正できる仕組みを取り入れ、より高精度であることから100万分の1(数マイクロ秒)単位の遅延も許されないような業界、例えば金融取引の世界ではこれらが活用されています。また、4Kや8Kと高画質化された映像の世界においても、高精度な時刻同期は欠かせません。放送のIP化はMoIP(Media over IP)が進んできましたが、これらもPTPの技術を組み合わせて成り立っています。(図3)

PTPに対応するMoIPメディアモジュール「IMR-200」

池上通信機が展開する映像と、時刻の世界は一見、別のもののように思えますが、これまで紹介してきたように、深いつながりがあることが分かります。NTPやPTPをはじめ、これらの高精度な時刻同期は、映像分野のほかにもスマートシティの構築や5G通信で広がる世界では欠かせない技術となることでしょう。

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