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Ikegami TECH

2026.01.13

Ikegami TECH vol.51 電波は限られた資源 ~周波数特性と最適なシステム構成~

今回は、映像伝送における無線通信をテーマに取り上げます。文書や音声と比較すると、映像は扱うデータ量が多いのが特徴です。特に、高画質な映像を送るためには、大容量の通信帯域が必要ですが、無線通信技術の進歩により、こうした要求にも応えられるようになってきました。例えば、一昔前の携帯電話では、アンテナを立てて音声通話を行うのが精一杯でしたが、近年は移動中の電車内でスマートフォンによりライブ配信を視聴することも珍しくありません。ここでは、それぞれの周波数の特性や、法規制なども交えた上で、映像伝送に焦点を当てて解説していきます。

高い周波数が使われる時代に

無線で使われる「電波」について、周波数の範囲と特性を紹介します(図1)。

 図1:周波数の特性

電波は周波数(単位Hz)で表現され、3THz(3兆Hz)までの範囲です。また、図の通りに分類別けがされ、それぞれに名称がついています。ここで、あらゆる周波数の実用例と1秒間にどれだけのデータを送れるかを示す指標である通信帯域、伝送距離の関係性を見てみましょう(表1)。


表1:周波数の実用例と伝送距離

(注) 伝送距離は送信電力、アンテナの利得などによって大きく異なります。特定の方向に電波の送出を絞る条件で、長い伝送距離を有する機器も存在しますが、本稿では一般的な値として表記します。

周波数が高いと大容量の通信帯域が確保でき、一度に多くのデータを送れるというメリットがあるため、高画質な映像を送ることや、複数の映像をまとめて同時に送ることに適しています。このような背景から、近年は高い周波数をどう活用できるか注目されています。
一方で周波数は高いほど、届く距離が短くなってしまうデメリットを持ちます。特に、ミリ波(EHF)では雨や雪による減衰も大きく受けるため、屋外で利用したい場合は天候も考慮しなければなりません。
こういったことから、現在の映像伝送では、極超短波(UHF)~ミリ波(EHF)が実用的に使われております。また、研究段階ではサブミリ波といったさらに高い周波数の活用が検討されています。

電波は限られた資源

電波は無線という名の通り「物」ではなく目に見えません。しかし、誰もが好き勝手に使えるものではありません。同じ周波数に複数の電波が重なることを混信と言い、これが発生すると正しいデータが目的の場所に届かなくなります。映像の場合、ノイズで乱れたり、映像が止まってしまうといった事象が発生します。そのため、電波は限られた資源として扱われ、正しい活用ができるよう国(日本では総務省)が管理をしています。
周波数帯や利用する電力によっては、無線を利用する際に免許が必要となる場合があります。無線の免許には大きく分けて二つあり、「無線を扱う人」に必要な免許と、「電波を発射する無線機」に必要な免許があります。
「無線を扱う人」に必要なものは無線従事者免許と呼ばれ、自動車で例えると運転免許に相当します。一方、「電波を発射する無線機」に必要なものは無線局免許状と呼ばれ、車検証に相当します。自動車が、運転免許証と車検証の両方が揃ってはじめて公道を走れるように、無線の世界でも、必要に応じてこれらが揃ってはじめて電波を出して運用することができます。
ただし、すべての無線機器に免許が必要なわけではありません。徒歩や自転車で移動する際に免許が不要であるのと同様に、一部の決められた無線機器については、免許なしで利用できるものがあります。例えば、自宅にWi-Fi機器を設置し、スマートフォンやパソコンを接続して利用する場合には、免許を必要としません。
一方で、免許なしに利用できる無線は、多くの人や機器が共有で利用する分、出力や周波数の使い方に制限が設けられています。そのため、混雑する時間帯や利用環境によっては、通信帯域が十分に確保できず、通信が遅くなったり、繋がりにくくなったりする場合もあります。

無線を有効活用したシステム構成とは

映像伝送に無線通信を活用する現場では、周波数の特性や免許の有無など、複数の要素を踏まえたシステム設計が求められます。限られた電波資源をいかに有効に活用するかが、高画質な映像を安定して届けるための鍵となります。
放送の世界では、これまで主に中継番組や素材伝送など比較的長い距離で活躍するケースが多かった無線技術ですが、最近は音楽番組でのスタジオやホール内、スポーツ番組のグラウンド等短い距離でワイヤレスカメラとして無線を使うことも多くなってきました。セキュリティの分野でも映像システムのIP化が進む中で、ケーブル配線がしづらい場所や移動しながら使いたいカメラ等で無線伝送をすることが増えてきています。
技術の進歩や市場環境の変化を踏まえながら、今後も無線を用いた映像伝送の在り方について、技術動向を踏まえた検討を続けていくことが重要です。 

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