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Ikegami TECH

2025.12.10

Ikegami TECH vol.50 リターンとタリー ~システムカメラならではの機能~

放送用のカメラはニュース取材などで使われている記録が主体となるカムコーダとスタジオやスポーツ中継などで複数台使われるシステムカメラに大きく分けられます。
システムカメラにはリターンとタリーというシステムカメラならではの重要な機能があります。
リターンとは、文字通りシステム側からカメラに送り返されてくる映像信号でカメラのビューファインダーに表示ができます。
普段カメラマンは自分の絵の画角を決めたりフォーカスを取ったりするためにビューファインダーを見ていますが、カメラ本体、あるいは手元に延長したリターンBOXのリターンスイッチを押すことによってリターン映像を見ることができます。

では、リターン映像はどの様な映像なのでしょう?
システムカメラは複数台のカメラをスイッチャーで切り替えながら運用されます。このため、画角を決めるにも、自分のカメラの画角だけを気にしていれば良いというわけではありません。例えば、ドラマなどシナリオのある場合は、自分の前のシーンのカメラの画角と見比べて、自分のカメラに切り替わった時のシーンの流れがスムーズである様に画角を調整しています。生放送の歌番組などでは、前のシーンの映像がリハーサルと違う流れであった場合にストーリーとしてつながる様に新たな流れに修正したりします。

もう一つ良く使われているのは、オンエアの映像の送り返し映像です。オンエアの映像には、テロップや歌詞の字幕や番組のロゴなど様々な情報が付加されます。自分の撮っている映像の人の顔の部分などにテロップや歌詞の字幕などがかからない様にズームなどで画角を微調整します。
台本の無いライブ中継などでは、前のカメラの画の流れから自分の画が使われるように工夫してアピールする事もあるようです。
一度野球中継をカメラマンの後ろで見たことがあるのですが、ものすごい速さで絶えずリターンスイッチを押しているのがとても驚きで、中継そのものよりもカメラマンの動きを見るのに終始していました。
この様にリターンを見ないと次の画が作れないと言っても過言でないほどカメラマンにとってリターンは重要な映像ソースと言えます。

       
   写真1                  写真2

リターンのソースは他のカメラやオンエア映像など幾つかの素材に切り替えて使う事になります。写真1は、当社のカメラの背面の写真ですが、〇で囲んだ部分がリターンのソースを切り替えるスイッチです。写真1はリターンを3種類選べる例で、リターン1~3のスイッチにそれぞれどのソースを割り当てるかを4つの異なる系統の中から選択して決められます。ここで選んだソースに対して、上部の白いボタンで切り替えるか、写真2のリターンスイッチ(カメラを左右に動かすパン棒とよばれる部分に付けられることが多い)によって切り替えます。

タリーは、一般的なムービーカメラでも録画中に赤く点灯するランプがついていますが、それと基本的には同じ機能です。
システムカメラでは、現在そのカメラで撮っている映像が使われているということを演者やキャスター、カメラマン等に示すために点灯させます。これによって撮られている人はそのカメラに目線を合わせることが出来ます。
この意味でタリーはある程度目立たなければなりませんが、一方でクラッシックコンサートなど真っ暗なホールの中では目障りだというお客様もいるので消灯したりする場合もあります。消灯機能が無かった時代には良くガムテープが貼られたりしていました。

また、タリーが付いている時には一部の機能を禁止する「タリーガード」という機能があります。これは、映像がオンエア中にいきなり変化してしまわない様にするもので、映像に大きな影響を与える様な機能をタリー点灯中は禁止するものです。例えば、オート機能とか、カラーバーのスイッチなどは、コントロールパネルから押されてもタリーガードが働いて効かないようになっています。
タリーは、リアルタイム性が命でIP化の時も特別な対応がされています。
昔、某局のニュース番組の終わりの映像で、当社のカメラとアナウンサーが同時に映り込み、タリーが消える瞬間が映しだされオンエアが終わったという感じを演出していましたが、あれは特別にタリーを操作していました。他のカメラのタリーが点灯しているところが映るという状況は本来あり得ないですね。映しているカメラのタリーが点灯しているわけですから。

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