Ikegami TECH
2025.06.11
Ikegami TECH vol.44 デジタルシステムへの「段階的」な移行 ~既設機器を活かした効果的な更新計画~

デジタルシステムへの「段階的」な移行 ~既設機器を活かした効果的な更新計画~
今回は、主にセキュリティカメラシステムにおいて、デジタル化更新を行う際に使われる手法をご紹介します。特にインフラに関わるシステムにおいては、数十年単位といった長期に渡ってカメラシステムを運用されることがあります。製品寿命による置き換えや、高画質になる新製品への交換などを理由とした「更新」を繰り返しながら、これらのシステムは運用を継続しています。ここでは、古くから使われるアナログシステムを一度に交換するのではなく、段階的にデジタルへの移行を行うための手法について紹介していきます。
まだまだ使われているアナログカメラシステム
セキュリティカメラシステムは、現在デジタル方式として、IP(インターネットプロトコル)に対応したネットワークカメラによる構成が主流となっています。一方、古くに運用を開始したアナログ機器も24時間365日運用を基本とした耐久性の高い設計であることから、中には数十年経っても故障なしに長期間運用されるものもあり、アナログカメラシステム(NTSC方式によるカメラ等で構成されたもの)は未だ多く残っています。それらのカメラシステムは簡単に取替ができるものであれば良いのですが、特にインフラに関わるシステムでは周囲環境による制限や運用の特性上、一度に全ての機器を撤去~新設工事を行うことが困難であるケースが多く存在しています。特にカメラ台数が多い、大規模システムの場合は顕著です。
エンコーダによるアナログ映像のデジタル化
一度に全てのカメラや周辺機器の更新が困難な場合、一部のアナログ機器を残しながら、段階的に更新する手法があげられます。それらを実現するためのキーデバイスとして、アナログカメラの映像をエンコードしIP(デジタル)伝送を可能とする「ネットワークエンコーダ」(写真1)という機器が存在します。
写真1:ネットワークエンコーダ
この「ネットワークエンコーダ」は、入力インターフェースとしてアナログカメラ信号(NTSC方式)を持ち、出力インターフェースとしてIP(LAN)を持ちます。この機器を組み合わせることで、古くから使われるアナログカメラを、最新のデジタル方式(IPによるネットワークカメラ)と同じように扱うことが可能となります。
段階的なデジタル化更新
ネットワークエンコーダを利用したシステム更新の例を次に示します。(図1)
[ブロック図]
図1:部分更新によるシステム更新例
このようにして、アナログカメラを一部残しつつ段階的に更新を進め、最終的には全てをデジタル化させることができます。一回当たりの工事負担が下がることで下記のようなメリットが考えられます。
- 工事期間中、映像が表示されない時間が短くなる
- 一回当たりのコストを抑え、費用負担を分散することができる
利点を活かしたシステム構築
ご紹介したように、ネットワークエンコーダなどを用いて段階的にデジタル化更新する方法は、運用やコスト目線で効果的な手法と言えます。例えば、日本におけるテレビ放送は2011年にアナログ放送が終了し、デジタル化された背景などもあり、アナログ映像に関連した部品、製品は市場から姿を消し始めています。そのため、修理対応が困難となってくるケースも増えてくることから、年数の経過したシステムを中心に、デジタル化更新を推奨しています。池上通信機では、運用状況やコストも考慮しながら、最適な手法を提案していきます。