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放送

2024.11.29

株式会社サガテレビ様

統合サブシステムで効率化、省力化、省スペース化を実現
現状と向き合いベースバンドを選択

街角や商家の片隅に恵比寿様が鎮座され、旅の安全・商売繁盛・家内安全など人々の暮らしを見守り続けてきた佐賀城下は、長崎街道の中間に位置し、江戸時代から異国の情報・文化を伝えてきた町です。

佐賀城の城内にあるサガテレビ様

株式会社サガテレビ(以下、サガテレビ)様は、その佐賀県で報道機関としての役割を担い、さまざまな番組やイベントを通じて地域に密着した情報・文化を発信されてきました。1966年の開局以来55年間にわたり佐賀の豊かな生活文化の創造と発展に貢献されています。

池上通信機は、サガテレビ様のサブシステム更新にあたり、制作サブと報道サブを一つに集約する統合サブシステムを受注し、2024年に納入しました。運用開始より半年が過ぎ、今回サガテレビ様で統合サブシステム構築を担当された映像コンテンツ制作技術マネージャーの西岡裕介様にお話を伺いました。

信号を挟んだはす向かいは、佐賀城の天守台や

国の重要文化財である鯱の門が立ち並んでいます。

佐賀駅の恵比寿様

佐賀市内には800体以上の恵比寿像が確認されており、その数は日本一!

二つのサブシステムの統合

今回の更新では、制作・報道と2つあるサブシステムを一つに統合するという会社としての大きな方針がありました。統合サブシステムは、全てのリソースを一つのルーターに入力するので、そこで障害が起きると高い確率で大きなトラブルにつながります。池上さんには、入出力数や機能など、かなり余裕を持った特長あるルーターでシステムを構築していただき、こちらがしっかり納得できるエマージェンシー策を提案いただきました。ベースバンドのルーターを長年手掛けてきた池上さんならではの提案だと感心しました。

あってはならないことですが、報道サブで障害が発生した場合でも、ルーターを統合したことにより、報道のカメラ映像やVTR、CGもルーターを介して、制作サブで番組制作が可能になります。信号の同期も取り直す必要はありません。最初からリスクヘッジした仕組みとしてしっかりシステムを構築できました。

効率化・省力化


ルーティングスイッチャー
「UHSM-220220」

出力数が多いルーターなので、配信のエンコーダーにも容易に渡すことができます。タリーも容易に表示できますし、GPIの制御もこちらの要望に応えてもらいました。
選挙などの特番では、イベントのタリーがきてテレビ放送はCMに入りますが、同時にストリーミング配信している映像に対して制御で蓋被せ*1をします。
以前は別の簡易スイッチャーを持ってきてアウトを1本もらい、動画を流す再生機を準備し、別の人員を付けて蓋被せをしていましたが、今回の更新でルーターの中だけで完結できるようになりました。配信用にセッティングする必要が無くなり、人員を割り当てる必要もなくなり、効率化と省力化にもつながりました。

*1 蓋被せ:放送がCMに入ったタイミングで、ストリーミング配信のコンテンツに対してテレビ放送向けのCMは流さずに他の映像を流すこと。

さらに上がったスタッフの瞬発力

従来のサブシステムは他社製でしたが、SNG中継車や可搬型FPU、中継車搭載用・報道スタジオ用カメラでは池上製品との接点がありましたし、自社で製作した中継車にも池上製スイッチャーとルーターを採用していました。今回の統合サブシステムへの更新において、同じシリーズの機材導入となり、操作感が統一されたことはスタッフに好評です。操作習得やトラブルシューティングに時間をかけずに使いこなしていますし、以前よりも増してスタッフの瞬発力が上がったと実感しています。1社の製品に統一にするのはリスクもあると思っていますが、現状の課題と限られたリソースを考えると、従来からお付合いのある池上さんのサブシステムを導入したことにメリットを感じています。

クレーンに設置された 「HDL-45A」

制作スタジオのロージープ

導入の決め手

今回、池上さんのサブシステムにした大きな決め手の一つは、マルチビューアーの使いやすさです。他社の提案は、従来のシステムと同様で、外部にマルチビューアー表示のための機材を接続するものでした。各ソースを分配して、物理的にスイッチャー、ルーター、マルチビューアーと渡していかなければならないのですが、池上さんのルーターはマルチビューアーを最初から内蔵していました。

外部に機材を置くスペースや物理的な接続の手間やコストが解消されました。タリーも、ID表示もルーターに入れば何でもできますし、大型モニター上での分割表示の割り当ても簡単にできます。固定されたウインドウ数だったものが、一気に自由度が広がりました。さまざまな配置パターンや配置換えも容易になり、スタッフからのいろいろなリクエストにも応えられるようになりました。現場に携わる人間として、これほど決め手になったものはありませんでした。

マルチビューアーの表示

ルーターリモコンでマルチビューアーの表示操作

 新たな試み

最近は、リモートプロダクションの取り組みを始めたところです。スポーツやイベントの中継で、現場はカメラマンなど小人数を配置して撮影します。映像はモバイルエンコーダを使って局に送り、サブシステムに映像を入れてスイッチングなどして配信します。インカムはスマホのアプリで容易に出来るようになっています。

従来は、6時間前に現場に入り、撮影、撤収と多くのスタッフが拘束されていましたが、リモートプロダクションにより現場スタッフを減らすことができ、コストも抑えられるのです。また、地上波への発信以外にネット配信というビジネス展開を可能にできるので、放送とは違う分野で収益に寄与することができると期待されています。

特に、今回導入したサブシステムは、リモートプロダクション業務の請負いを増やすために有効です。複数のスポーツ中継が集中する週末に、特別番組の放送が決まりサブシステムを使用していたとしても、M/Eコントロールパネル1列分をスイッチャー卓から切り離して、コンテンツを制作することができます。サブシステムの運用を気にせず、容易に配信が可能になるのでシーズンを通したスポーツ中継でも充分対応できます。

MuPS-5000スイッチャーのM/E

現状と向き合いベースバンド仕様のルーターを選択

技術者としてはIPに切り替えるのが正解なのかもしれませんが、IPのメリットをフルに享受できるのかという観点で、我々の現状としっかり向き合ってベースバンドにしました。新社屋だったり各設備がフロアー違いで離れていたりすれば、IPを選択した可能性は高いと思います。しかし、当社は、制作サブ・報道サブ・マスター・ラック室等が同じフロアーにあり、トランク回線もまかなえています。池上さんから提案いただいたサブシステムであれば、ベースバンドを選定しても、我々がやりたいことや課題を解決できると思いました。

統合サブシステムとして、報道・制作のルーターを一つに統合した時に、映像ソースの入出力数を収めきることが出来る、15年使っていく中で入出力数の増減が出てきたときに余力があること等を織り込んだ要求仕様書を作りましたが、それに応えてくれるかを一番のポイントとしていました。

ルーター入出力の許容量とルーターが一つになることへのメリットとデメリット、リスクヘッジをどこまで提案いただけるかも重要でした。提案いただいた各社のシステムで、信号は大丈夫か、リスクへの対応がとれるか、ルーターに障害が出たらどう対応できるかというところは慎重に確認しました。いろいろなメーカーと話をさせてもらった中でも、特に池上さんには、我々の要望にしっかりと向き合って対応いただいたという印象が残っています。

ラック室の機材

制作サブシステム

報道サブシステム

しっかりコミュニケーションをとり、柔軟に対応

工事に入る前の仕様の打ち合わせもしっかり対応いただき、工事期間中に技術者の方々ともしっかりコミュニケーションをとらせてもらいました。図面上ではこうなっていますが、こうしたいというこちらの要望に対し、現場で柔軟に対応してもらえたことには本当に感謝しています。運用開始してから半年が経ちますが、大きなトラブルもなく喫緊に対応が必要という事態がないのは一番いいですね。

最近は、当社スタッフに対し、こんな機能があるから使ってみようと話しており、折角導入したシステムを充分に使いこなせるよう取り組んでいます。

おこがましい言い方かもしれませんが、このサブシステムの価値を引き上げていくのは、導入した担当者だと思っています。我々が充分に使いこなし、新しい使い方をして成果を上げることができれば、池上さんの評判にもつながると思っています。単なる設備更新の担当者ではなく、将来を見据えて長くつきあっていくユーザーとメーカーとして、一緒にこの業界を盛り上げていくことを考えると、それが我々に課せられた課題や使命だと思っています。

報道サブ・制作サブ・ルーターのラック

制作スタジオ

MuPS-5000スイッチャーの操作パネル

佐賀県で唯一の民放局として地域へ貢献

当社は、中継業務にも力を入れています。佐賀県はスポーツが盛んですが、「国体」*2 と呼ばれてきた全国大会が2024年から「国スポ」*3 という名称に生まれ変わり、初めての大会が佐賀県になりました。プロスポーツでも、サッカーやバスケットボールでトップリーグに所属する地元チームの公式映像や配信等の中継業務をシーズン丸ごと請負い、昨年ベースで中継車稼働数が年間50回以上となりました。ほぼ毎週末中継を行っている感じです。昨年、佐賀市内にSAGAアリーナという今までなかったような施設ができました。その盛り上がりに拍車をかけるようにバスケットのチームがすごく人気になり、佐賀に新たな熱気が沸き上がりました。そこに映像として地上波の番組や、配信の中継をやることにより、地元メディアとして地元の盛り上がり、スポーツの盛り上がりの一翼を担えたという一年でした。それに続いて「国スポ」があり、新しいシーズンも始まり、しっかりといい映像・音声を地元の方に届けたいという思いで、日々取り組んでいます。

当社は、佐賀県で唯一の民放局なので、地元を引っ張っていく立場でもあり、環境のことやモノづくり・街づくりなど、中継と関係ないことも地元のリーディングカンパニーとして取り組んでいます。佐賀は独特な土地柄で、我々が少しでも後ずさりしたり中途半端な仕事をしたりしていると隣県の企業に仕事を奪われてしまうことがあります。そこは、地元のプライドを持ってやっており、毎週末の中継車稼働であったり、人手不足があったりしても我々が先頭に立ってやるようにしています。

*2国体:国民体育大会
*3国スポ:国民スポーツ大会

年間50回以上稼働する中継車


サガテレビ様の1階フロアーは、どなたでも立ち寄れる「JONAI SQUARE」となっており、おしゃれなショップやカフェを展開し、
地域の人々でにぎわう、さまざまな「つながり」が生まれる空間を提供されています。2018年には「佐賀市景観賞」を受賞されました。

 

エントランスを入ると、モノづくりの技や伝統を伝え、生活に彩りを添える品々を揃えたショップがあります。

 

佐賀城内を流れる多布施川の水辺に面したカフェでは、心地よい時間を提供しています。


Ikegamiへの期待 ~変わってほしいこと、変わらないでいてほしいこと~ 

今後の池上さんに対する期待、ありますよ! 池上さんは少しセンスないですね。(笑、笑)

まだ昭和な感じなので、恰好いいなというのが欲しいですね。

今回の更新で他社からお洒落にデザインした卓の提案がありました。若いスタッフや実際に触るスタッフからは、テンションが上がるという意見が出ていました。明るいテイストでおしゃれな感じのデザインですね。古き良き放送を一緒にやってきた池上さんだからこそ “何か池上さん古臭いですよね” と感じることはあります。その一方、SNS等では、ソフトで明るい発信をされているので “何かちょっと変わってきているのかな?” と期待しています。

最近では、電話するとカスタマーセンターへお問い合わせ下さいと自動音声が流れたりするメーカーもありますが、小さな部品の問い合わせだけなのに面倒くささを感じます。その点 ”相談しやすい池上さん” というのは変わらないでいて下さい。

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