放送
2024.09.26
株式会社QVCジャパン様
4K IPカメラシステムの導入でメンテナンス性が向上、省スペース化、省電力化を実現
24時間365日休むことなく魅力的な商品を紹介

ブロードキャスト エンジニアリング
ブロードキャスト エンジニアリング チーム
吉森 拓也様
株式会社QVCジャパン(以下、QVCジャパン)様は、商品の調達・番組制作・放送・配送までをワンストップで行っているテレビ、インターネットを主体としたマルチプラットフォーム通販企業です。
本社の「QVCスクエア」は千葉県千葉市美浜区にあり、JR京葉線の海浜幕張駅から徒歩約3分という好立地にあり、駅から幕張メッセ方面に歩くとお洒落なオフィスが目に入ってきます。
本社にはスタジオ、サブコントロールルームなどの映像制作設備、映像送出設備、カスタマーコンタクトセンターといった機能を持ち、千葉県佐倉市にある配送センターを除き、ショッピングチャンネルに必要なほぼすべての機能を網羅しています。
QVCジャパン様は、2000年に創業して放送システムを構築し、2001年の4月1日から放送を開始され2013年に現在のオフィスに移転されました。2018年の12月からBS4K右旋のQVCジャパン専用チャンネルにてピュア4K HDR放送を開始。7時から26時まではライブ放送、26時から7時まではリプレイ放送にて24時間365日、上質な商品の情報を高品質な映像でお客様にお届けしています。
今回は、4K IPカメラシステム「UHK-430」の導入の経緯や運用状況、今後の展望等についてQVCジャパンの吉森 拓也様にお話をお伺いしました。

QVC様の社名は、企業理念である「品質=Quality」、「価値=Value」、「利便性=Convenience」の頭文字をとっています。
番組制作で最も重視されていることは
番組制作のコンセプトは、「商品が主役(Product is King)」、「ソフトセル(NOT Push, BUT Pull)」、「ライフスタイル提案型(Story Telling)」、「見つかる喜び(Joy of Discovery)」です。このコンセプトに則って番組を構成し、「こんなシチュエーションでこういった使い方が便利です」といった形で番組の進行を担当するナビゲーターが、より良い新しい商品をご紹介しています。
お客様に「見つかる喜び」を抱いていただき本当にいいと思ったものだけを購入してくださいというように番組作りを行うので、商品の映像は、お手元に届いたときに違和感のないよう実際の商品の色を忠実に再現しています。
また、在庫状況やカスタマーコンタクトセンターに寄せられたお客様の生の声をリアルタイムで反映し、「洋服の裏地が見たい」等のリクエストが入ると、ショッピングナビゲーターがそれに応え、洋服の裏地を見せたりする等お客様の声を大切にする番組としています。
「UHK-430」を選定いただいた理由は
2000年の開局当初から池上さんのカメラシステムをずっと使用しています。メーカーによって操作性が変わる部分があるため、オペレーターにとって操作面で馴染みがあり、画質や使いやすさを重視した結果、池上さんを選定しました。


メンテナンス性向上とスペースファクター、省電力化が決め手

「UHK-430」を導入する前は、SDI出力のカメラを使用していたため、カメラの後段にSDIをIPに変換するゲートウェイという機器が必要でした。
ゲートウェイは、カメラの台数分用意する必要がありメンテンナンス費用がかさんでいました。当然電力も台数分かかっていたため、「UHK-430」でIP化することにより、ゲートウェイが不要となり、ラックスペースも空き、省電力化も図れ、メンテナンスの課題も解決できると考え導入を決断しました。
1階にあるメインのスタジオ1、スタジオ2では、「UHK-430」をロボットペデスタルで運用しています。スタジオの天井には、商品撮影用や、その他制作する番組に応じて、クレーンでの運用や担ぎでの運用等さまざまな形でカメラを使用しています。
7階にあるペントハウススタジオは、実際の寝具や家電を紹介するマンションの一室風としたスタジオです。

クレーンに設置された「UHK-430」

天井に設置された「UHK-430」

ペントハウススタジオ
導入時のエピソード
技術的な話になってしまいますが、「UHK-430」は、NMOS*1の制御で切り替えなければならなかったので、当時NMOSに関する知見がなくNMOSによる制御の検証に時間を要しました。池上さんの技術の方も張り付いていただいて検証を重ね、実運用を始めました。
最終的にIPカメラシステムを導入したことで、当初の目的通りメンテナンス性が良くなり、ラックスペースを空けられ、省電力化も実現できたことは、当社にとってかなりメリットになりました。
SDIからIPに変えて運用面で変化はありましたか?

IPに変えても画質の低下ということは特にありません。向上したところは遅延量が減ったことです。ゲートウェイを入れていた時は、カメラのリターン映像の遅延量が多かったのでが、「UHK-430」を導入したことで1~2フレーム程度改善されました。
弊社のカメラマンも、リターン映像について気にしています。ゲートウェイで変換していた時はリターン映像へ切り替えた際にズームした映像等が数秒遅れてしまい困っていました。
他の放送局さんに聞くと、やはりカメラのリターン映像の遅延量をかなり気にされているところが多く、当社に来社される方にも関心を持たれて毎回聞かれます。
遅延が0というのは難しいと思いますが、遅延は極力減らしたいです。池上さんでも今後の開発等で、より遅延量の改善に期待します。
放送機器のNMOS対応について
今後、放送用のIP機器がNMOSに対応していく形にはなっていくと思いますが、IP化を始めた当初は、不安定だったイメージがあります。改良されていけば良いとは思いますが、昔からある規格で「Ember+」*2等にも対応されていた方が良いかと考えています。
当社のシステムを構築する際にNMOSだけの対応となると、各社の解釈の違いでシステムの構築が難しくなる一面もあるのではないか、という印象を持っています。
例えば、コントロール側にブロードキャストコントローラーというものがあるのですが、バージョンアップがあった際にそこに接続されている機器が正常に動作するかという不安があります。NMOSを否定するわけではありませんが、NMOSに集約してしまうとデメリットも出てくる可能性があると検証の中で感じました。

保守・メンテナンス対応について
カメラシステムの保守体制は満足しています。また、現在はIPシステムの保守全般を池上さんにお願いしていますが、お陰様で安定稼働しています。引き続きよろしくお願いします。
映像システムの今後の展望
常に新しい技術にチャレンジしていきたいと思っています。映像をクラウドに上げるシステムについて、本格的に導入するかは別として、今後の動向を探っていきたいと考えています。その他は、インターネットへの配信系に力を入れていきたいと思っています。現在はテレビ放送からの受注の割合のほうが多いのですが、他の放送局さんでは徐々に逆転現象が起こり始めています。QVCジャパンの場合、まだまだテレビの方が強いという印象ですが、いずれ逆転する時が来ると思いますので、その時に向けて配信する機器を検証して導入していきたいです。
池上に対するご要望等、期待する点について
池上さんには、システムインテグレーターとして保守も含めQVCジャパンのシステムを見ていただいているので、次期システム更新時にはカメラ以外の製品も開発・提案いただき、納入していただける機器の幅を広げてほしいと考えています。

エレベーター前にあるプログラムガイドのヒストリー展示
番組で紹介する商品は年間約21,000点にも上ります。

エレベーターからは、オフィス内が見渡せます。
*1 NMOS(Networked Media Open Specification):
AMWA(Advanced Media Workflow Association)が作成した放送機器の映像や音声をIPで制御、管理するための仕様。
*2 Ember+:LAWOが開発に関わった非常に汎用性が高く、簡単に実装ができる制御プロトコル。