放送

2024.04.10

株式会社嶺南ケーブルネットワーク様 - 福井県敦賀市

サブシステム

株式会社嶺南ケーブルネットワーク(以下、RCN)様は、1989年11月18日に開局し、敦賀市の一部地域でサービスを開始されました。現在の放送エリアは、福井県敦賀市内全域です。開局当初はテレビの多チャンネル放送から始まり、今ではインターネット事業、固定電話事業、スマートフォン事業なども展開しています。
RCN様はサブシステム更新にあたり、池上製「MuPS-5000」小型スイッチャーを核とした4K対応のシステムを導入し、2023年4月より運用しています。約1年が経過し、今回導入の経緯、使い勝手、将来構想などをRCNの山崎 裕 様と、システム設計・構築を担当された酒井電機株式会社(以下、酒井電機)の林 浩一 様にお話を伺いました。

市民に必要とされ、喜ばれる番組を提供

写真左:株式会社嶺南ケーブルネットワーク 山崎 裕 様
写真右:酒井電機株式会社 林 浩一 様
山崎様:

RCNは、市民に必要とされ、喜ばれる番組を提供することをモットーとしています。最近のトピックスとしては、2024年3月16日に北陸新幹線の金沢-敦賀間開業に合わせ、新幹線が映る位置に情報カメラを追加で設置しました。
東京駅から約3時間で敦賀駅に到着できるようになるので、地域の活性化、敦賀の知名度向上につながると思います。この若狭湾に面した福井県の南部の嶺南エリアとして、他の市や町でもさまざまなイベントや観光に向け尽力しています。地域に対する情報発信という意味で、ケーブルテレビ局の役割は非常に高いと考えています。

番組作りで重視されているところは

山崎様:

開局当初からコミュニティーチャンネル(自主放送制作チャンネル)の中でも、ニュース・情報番組に最も力を入れて取り組んでいます。
コロナ禍では毎日の更新が難しかったのですが、今では「つるいち!」というニュース・情報番組を月曜日から金曜日まで放送しています。19時が1日のうち最初の放送で、1時間に1回ずつ再放送することで隙間時間にも見てもらえるよう、取り組んでいます。

MuPS-5000導入の経緯

リプレースした4K対応のサブシステム
山崎様:

2008年にHD化したサブシステムを2023年4月に4K対応のサブシステムとしてリプレースしました。その際重視したことは、毎日のニュース番組を収録後、素早く放送できるシステムであることです。加えて、これまでの使い勝手を継承し、生中継にも柔軟に対応できるサブシステムを作ることでした。また、ケーブルテレビ局では、地上波の放送局のようにマスターの考え方がないため、サブシステムがマスターの代わりになるように放送監視や情報カメラの監視なども行えるシステムに更新したいと考え、酒井電機の林さんに相談させていただいて設計を進めました。
放送の4K化が進んでいるこのタイミングで更新するのであれば、オール4Kは難しいものの、4K(12G-SDI)をメインとしたHDとのハイブリッド運用ができるようにお願いしました。

スピードを重視したリニア編集

山崎様:

毎日のニュース番組を収録するにあたって、スピードを重視するためリニア編集も使用しています。以前からのワークフローを継承したかったためこの仕組みを残しています。
基本的にノンリニアにキャプチャーしたものを最後にリニア編集で整理し、テロップなどをのせ、放送用の完パケを作っています。放送直前に収録を終えて、そのまますぐ放送しないといけない場面があり、これまでのワークフローを継続したいと考えました。

林様:

導入にあたり、完パケを作るスピードを特に重視しています。例えば、テロップを間違えるとノンリニアでは再編集後、再度レンダリングが必要になりますが、リニアであれば一部分のテロップを修正するだけで完パケができます。リニア編集の方が手馴れているので作業効率を重視することができました。テープは使用していないのでファイルが基本になりますが、ファイルのためリニア編集設備の構築には大変苦労しました。
更新にあたり、リニア編集設備は4セット納品させていただいているので長期に渡って使用いただけると考えています。

周辺機器も含めてオールインワンでシステム構築ができる「MuPS-5000」を選定

MuPS-5000の操作パネル
林様:

「MuPS-5000」の選定理由は、マスターを含めたシステム構築のため、入力素材の監視に豊富な映像入力が必須だったためです。他社ですとマトリックススイッチャーを組み込まないとシステムが成り立ちません。しかし、設置するスペースが足りないこともあり、システムを簡素化するためにも池上さんの「MuPS-5000」が最適と考えました。
このスイッチャーは、40という豊富な入力数に加え、アップコン、ダウンコン、FS、マルチビューワーなどの周辺機能が内蔵されています。マルチビューワーは、機能が充実していてレイアウト変更等が自由に行えます。例えば、明日中継という時はマルチビューワーの表示を簡単に中継モードに切り替えることができます。このように機能、スペース、予算も含め、課題を解決してくれる「MuPS-5000」は、オールインワンのスイッチャーとして完璧でした。
このサブシステムは、「MuPS-5000」がないと完成できなかったと思います。
12G-SDI仕様で4K、HDのハイブリッドシステムといえば「MuPS-5000」ではないかと考えています。

MuPS-5000本体


山崎様:

価格面では、池上さんというと高価なイメージがありましたが、マルチビューワーやFSなどの周辺機能をトータル的に考えて他社と比較してみると、結果的にコストパフォーマンスに優れていると思います。ケーブルテレビ局でも強い味方になると考えています。

林様:

ケーブルテレビ局は、サブシステムとマスターでシステムを兼用しています。入力数をある程度持っていないと使えません。山崎さんとIPと12G-SDIの比較もしてみました。

山崎様:

IPと12G-SDIを比較しましたが、コストと運用面を考え、12G-SDIを選択しました。

林様:

IPも無視はできませんが、コストと運用面で考えるとケーブルテレビ局さんの規模だと12G-SDIがベストではないかと思います。今回のRCN様のシステムは、ケーブルテレビ局のモデルケースになるサブシステムだと思います。

音声ディレイが44msの低遅延でシステムを構築

林様:

現在は12G-SDIのカメラとテロッパー以外の映像はHDのため、HDをスイッチャーで4Kにアップコンしたものをダウンコンして音声をミックスして収録しています。
この処理で音声ディレイは、3フレ、4フレは発生すると覚悟していましたが、設置後実際に測定したところ44msと1フレ強の遅延でした。以前のHDシステムと比較しても遅延が少なくなり驚いています。今、サブシステムで使用している音声ミキサーでは44msしかディレイをかけていません。

スイッチャーを120%使いこなす、マクロを組みボタン一つで簡単操作

山崎様:

さらに「MuPS-5000」の良かった点として挙げられるのは、マクロ*1を組んで運用できることです。非常にありがたく思います。

林様:

収録はある程度パターン化されているので、パターンをマクロで組むことにより、テロップ出しやDSKのボタンを押すなど番組進行するための操作をボタン1つで行えます。新しい人が収録に携わってもすぐ対応できます。

山崎様:

マクロを使うことでOTC(ワンタッチコントロールシステム)のように運用できるというのは嬉しいですね。もう一つ驚いたのは、GPIに外部押しボタンをアサインして制御できることです。これは非常に便利で、音声の担当者でも映像の切り替えが外部押しボタン一つでできる柔軟性があります。設定がわかりやすくマクロを組む際も、取扱説明書を見ずに直感的に操作ができます。

林様:

「MuPS-5000」の機能を120%引き出して使いこなしている山崎さんの力量です。

今後の展望

山崎様:

今後の展望としては、例えば中継車に設置したスイッチャーの操作パネルから局にあるスイッチャー本体に光回線を通じて4波から5波の映像と制御信号を多重して送り、リモートプロダクションのような形で運用したいと考えています。

林様:

まずは、アークネット*2で制御信号を伝送したいと思っています。

山崎様:

こうしたリモートプロダクションが構築できれば、音声については、中継車側には担当を置かずに、局側の設備で中継現場をすべてコントロールできます。Dante*3とアークネットを組み合わせて、省人化、機材の削減も可能かと思っています。
2023年の4月から隣町の三方郡美浜町にあるケーブルテレビ局「美方ケーブルネットワーク株式会社(MMネット)」が当社の子会社になりました。両社の業務効率化のため、当社の設備からリモートで運用できるようにすることも考えています。

林様:

MMネットさんとは、昨年の10月ぐらいからすでに互いのコミュニティーチャンネルの番組を双方で放送しています。今後考えられるのはMMネットさんのスタジオは使わずに、RCNさんの機材を使い「リモートで番組を制作することなどがアークネットやDanteを使うことで実現し、機材を減らすことも可能になってくると思います。12G-SDIをIP化したかのようにさまざまな場所で使いたいと考えています。

Ikegamiへの要望

株式会社嶺南ケーブルネットワーク
メディア戦略部 コンテンツ企画制作課
課長 山崎 裕 様
酒井電機株式会社
特機部
次長 林 浩一 様
林様:

池上さんには、放送専業メーカーとして今後も新しい製品を作ってほしいと思っています。
特にショルダーのENG用のカメラレコーダーを作ってもらいたいです。池上さんのスタジオカメラの評価は高いので、カメラに光アダプターを取り付けスタジオと中継を兼用できれば、市場の活性化にもつながると思います。

山崎様:

中継用のカメラなり、ケーブルテレビ局向けのリーズナブルな製品を開発していただけるとうれしいと思っています。

スタジオのセットも酒井電機様が手掛けられました。

商談や打合せ場所で使用されるロビー

*1 操作手順を記憶し、複数の操作手順をワンタッチで再生できる番組制作の操作サポート機能
*2 産業用で使用されるリアルタイム性に優れた制御ネットワークの規格
*3 デジタルオーディオネットワークの規格

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