世界最小の医療用8K解像度カメラを開発　手持ちでも操作が可能な8K硬性内視鏡システム実現へ

池上通信機株式会社と一般財団法人NHKエンジニアリングシステム（以下NES）は、アスペクト比を1：1とするスクエア（正方）・イメージング技術と有効対角長8.8mmの小型センサを用いた世界最小の医療用8K解像度カメラ「MKC-820NP」を共同開発しました。

池上通信機では、これまで医療用カメラで小型・軽量化を実現した高画質・高感度カメラの開発に取り組み、手術顕微鏡用カメラシステム、術野カメラシステムなど医療現場において多数の実績を築き、ノウハウを培ってきました。

8K技術開発は、2002年に４CCDカメラからスタートしました。2010年には、「オリンピック」などのスポーツイベントで実用化、2015年には小型ハンディタイプの8Kカメラを開発するなど8K放送技術の発展に寄与してきました。

一方NESでは、平成28～30年度の3年間、国立研究開発法人日本医療研究開発機構（AMED）『8K等高精細映像データ利活用研究事業』の支援により、8Kスーパーハイビジョン技術（以下、8K技術）を用いた新しい硬性内視鏡手術システムの開発と高精細映像データの活用を検討する研究において、腹腔鏡用8Kカメラシステムを開発し、臨床試験を通してその有効性を検証しました。

この腹腔鏡用8Kカメラは、1.7型のアスペクト比16:9のイメージセンサを用いた放送用カメラを改造したもので、質量は720gありました。高精細・広視野という8K映像の特徴を利用して、必要に応じて電子ズームによって患部を拡大表示する手法の有効性を確認されました。しかしながら、カメラを動かす際の取り回しのしやすさや鉗子等の操作時のカメラとの干渉の点で、重さと大きさに課題があることも明らかとなりました。

そして今回、池上通信機の医療市場での映像技術とノウハウに加え、放送で培った8K技術開発を基盤とした映像技術、およびNESのこれらの8K腹腔鏡カメラ開発および臨床試験の経験とノウハウを投入し、従来比較、質量で1/3以下、容積で1/7以下の医療用8K解像度カメラを実現しました。カメラスタンドに半固定の状態ではもちろんのこと、手持ち運用も可能なカメラとなっています。

スクエア・イメージングは、円形の視野を持つ光学機器全般との親和性が高く、内視鏡や顕微鏡などの医療用途のみならず、望遠鏡、あるいは監視やVR用途で用いられる360度撮影カメラなど、多様な用途への利用が考えられます。今回開発したカメラは、これらの用途で8K映像が得られる小型カメラとしても利用が可能です。

今後、内視鏡用カメラとして必要なオートフォーカス機能の実現を図るとともに、さまざまな用途の開拓を進めます。

なお、本カメラは5月30日（木）～6月2日（日）の期間でNHK放送技術研究所にて一般公開が予定されている、「技研公開2019」のNESブースにおいて展示されます。

表1：新旧カメラの諸元比較

諸元	旧型	新開発
イメージエリアの有効寸法 (水平×垂直、対角：mm)	24.6×13.8、28.2	6.2×6.2、8.8
レンズマウント	マイクロフォーサーズ	Cマウント
有効画素数	7,680×3,840	3,840×3,840
解像度	3,600TV本	3,600TV本
感度	2000lx, F5.6	2000lx, F5.6
出力信号規格	ITU-R BT.2020	ITU-R BT.2020
出力インタフェース	3G-SDI×8本(DG)	3G-SDI×16本(Full)
質量（レンズおよびケーブルを除く：g）	720	210
寸法(幅×高さ×奥行：mm)	120×120×73	34×40×99.5
消費電力(W)	8	5.4