セキュリティ

2022.02.22

西日本旅客鉄道株式会社 様 - JR西日本七尾線

高精細な監視システムによるワンマン運転でさらなる安全体制の構築を実現
ワンマン運転士用フルHD縦型モニター列車監視システム

西日本の広いエリアに路線を展開する西日本旅客鉄道株式会社(以下、JR西日本)様。七尾線は、石川県の能登半島南部を縦断する総延長59.5kmの鉄道路線です。沿線にはのどかな田園風景が広がります。和倉温泉・輪島などの能登半島への観光客や、金沢市周辺の通勤通学客を運ぶ地域の足として親しまれています。
七尾線では、2021年3月のダイヤ改正から、新型車両521系導入による普通列車4両編成のワンマン運転を開始しました。
その際、プラットホーム上の乗降客の安全確認用として、「ワンマン運転士用フルHD縦型モニター列車監視システム」をご採用いただきました。半年を経て、改めて導入までの経緯や、運用してのご感想、今後の展望を伺いました。


今回取材にご協力いただいた皆様
・金沢支社 電気課       高吉 恵 (たかよし めぐみ)様
・金沢支社 七尾鉄道部 尾川 嘉幸(おがわ よしゆき)様
・金沢支社 運輸課       小部 健太(おべ けんた)様

導入された経緯をお聞かせください

高吉様
今回、新車導入というタイミングでワンマン化することになりました。従来からの車掌用ITV(映像監視システム)は、通常15~19型モニターが設置されています。ワンマン運転では、運転士さんが座った状態でモニターを見ることになります。今回、七尾線で開始した4両でのワンマン運転は、JR西日本金沢支社管内でワンマン運転を実施する車両数では初めての両数となることから、「従来の車掌用モニターサイズでは4両分の安全の確認が出来ないのではないか」との意見がありました。お客様の安全の確保が必要な中で、保守時の安全面も考慮すると、24型が一番大きいモニターサイズになります。次に「24型でどれだけ安全を確認できるか」を、いろいろ検証させていただきました。運輸課の知恵も借りて検証を重ねた結果、縦型が一番奥の人まで見えるということが分かりました。モニターの大きさについては、同じ条件で21.5型と24型を確認しながらカメラの位置を何度も調整し試験を繰り返しました。最終的には、運輸課の意向も踏まえて、少しでも大きく安全に確認できるサイズとして24型の縦型に決めました。

縦型でホーム上の奥行きを確保した視認性の高いモニター

尾川様
七尾線は通勤・通学の輸送が多い路線です。朝と夕のラッシュ時間帯には特に大勢の方が利用されます。ワンマン運転になって運転士がドア操作をするようになり、ドアの開け閉めはかなり気を使っています。

縦型モニターにしたことによるメリットは?

高吉様
安全を一番確認しなければならないのは、「点字ブロックの線路側から車両との空間に人の挟み込みがないか」ということです。そこをピンポイントに映すには、左右の余分な部分を映さずそのドア空間だけを確実に映す縦型が一番理想的でした。フルHDの採用で映像の映り方も今までよりすごく綺麗になっています。
従来のITVと同じ高さに設置したことから「従来通りに設定や調整の保守ができる」、ということは私たち設備担当者としては、良い点と感じています。金沢支社はJR西日本の中では環境条件が一番厳しいと感じます。降雪量が多いことは気にかけていますが、去年の使用開始前にかなりの大雪があり、条件によってはモニターハウジング前面に雪が吹き込んで付着することや、映像が見やすくなったことから逆に水滴一つ付着しても気になってくる、といった課題も見えてきました。

実際に乗務されてのご感想は?

尾川様:モニターの大きさは十分だと思います。フルHDなので、1両目から4両目の端の人までぼけた感じがなく、くっきりと見えます。特に夜間はホーム上に設置しているミラーよりも見やすいですね。明るくてはっきり見え、すごい技術だと思います。反対に「太陽光が映り込むと見えづらい」という意見も出ています。これは従来からの課題なのですが、七尾線は屋根の無い駅が多く、太陽光がモニターに入りやすいことが原因だと思います。また、朝日・夕日の時間帯は利用されるお客様が多く、安全確認には特に気を使うので、そういう意見が多いのだと思います。

七尾鉄道部 尾川様

ご苦労されたことや印象に残っていることは?

高吉様
今回車両が新車に換わることで、ヘッドライト・車内照明がLEDに変わり、駅の照明もすべてLEDに変わって、「光の度合い」が従来よりも明るくなった、という変化がありました。「夜間も見やすく」するなかでは、同時に列車のライトや駅照明のLEDの光で白く映って見えない(被写体を判別しにくい)という課題も最後まで残りました。夜間のホームを見やすく映すのにかなり力を入れていろいろ対策し、最終的に見やすくなったことは、本当に良かったと思います。

ホームに応じたカスタマイズで設置

池上通信機
「列車のヘッドライトの光がカメラに直接入ってしまう」課題については、カメラに専用のフィルターを付けるなどいろいろ対策して改善していきました。何回も現地で調整して、皆様の御意見を伺いながら、カット・アンド・トライで挑戦させていただけたことは、当社としても良い経験とノウハウの蓄積になりました。

小部様
七尾線は、初めて4両編成でワンマン化されるということもあって、運転士さん目線からいろいろ意見を出してもらい、少しずつ解決しながら進めていけたのは、すごく大きかったです。「太陽の映り込みによる課題」がまだ残っていますが、逆に現在の改善要望内に収まっているのは、電気課や池上さんの今までのこまめな調査・検討からのきめ細かい対応によるところが大きいと思います。

高吉様
さらに「一番後方部分のお客様をどれだけ大きく映せるか」という課題もありました。こちらは、池上さんの技術的な検討と助言からクリアできました。いろいろ検討して一番苦労したところでしたが、お客様を従来の2倍近く大きく表示できたことは、とても良かったと思います。

池上通信機
「カメラをどこに、どのように配置するか」という件に関して、試運転列車を何度もご用意いただいて、デモンストレーションという形で結果が得られたのは、とても大きな成果でした。

高吉様
そうですね。カメラ設置に関する検証で、何度か試運転列車を駅に3時間位留め置くなど、ここまで大規模にすることはなかなか無いことです。すごく良い貴重な機会だったと思います。

その後城端線にもITVシステムを導入頂きました

小部様
城端(じょうはな)線も2021年10月のダイヤ見直しに伴って3両でのワンマン運転を開始しました。私も前乗車指導という形で添乗しましたが、池上さんのITVシステムの映像は、七尾線と変わらずしっかりと良く見えています。七尾線での知見もあり、設置後に乗務員からの改善意見も特に無く進められました。朝日や夕日、夏場や冬場で太陽の位置が変わりますから今後意見が出てくるかもしれませんが、現時点では問題なく運用されています。2022年3月からは、氷見(ひみ)線にも同様のITVシステムを導入予定です。

これからの ITV 設備の方向性や展望についてお聞かせください

高吉様
今付けているモニターは、朝日などの光が画面上に反射して少し見難く感じることもあると運転士さんから聞いているので、そういった気象条件などにも対応できるモニターに改修していければ、良いと考えています。

電気課 高吉様

尾川様
様々な気象条件でも、綺麗に映るモニターがあれば、より確認しやすいですね。

小部様
ワンマン運転は、これからも拡大していかなければならないところもあります。今の課題も含めて、しっかりと運転士の方々のトレースを行なって情報共有し、ITVに関する機能性能改善につなげられるように電気課共々、課題解決へ向けて進めていきたいと考えています。
七尾線・城端線のITVはJR西日本内でも走り出しであり、金沢支社はそのモデル支社になります。他の支社から聞かれる機会も多くなり、同様な形で導入されることも予想されることから、今回の事例をきちんと社内に還元していけるように、これからもご協力いただくことは多々あると思います。

池上通信機
この度は様々なご協力をいただきありがとうございました。当社にとっても最良なITVシステムを納入することができました。今後も共有いただいた内容から、さらに機能性能改善したご提案・ご協力をさせていただき、安心・安全な運行に貢献できればと考えています。

主な導入機器

・高感度フルHDカラーカメラ「ISD-240HD」
・フルHD高輝度高精細24型ワイドモニター「FCM-E2460HD」
・カメラハウジング「TY-584」
・モニターハウジング「MY-KW24 T」シリーズ

七尾線沿線のご紹介

七尾市 青柏祭(せいはくさい)
ユネスコの無形文化遺産に登録されています

金沢駅 鼓門(つづみもん)
能楽の鼓をイメージした荘厳な門構えです


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