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Ikegami TECH

2023.03.15

Ikegami TECH vol.17 映像同期はなぜ必要なのか?

映像同期はなぜ必要なのか?

前回は、IPシステムで重要となるPTP同期について、その仕組みをご紹介しました。PTP同期は標準時刻を基準としているため、現在使用しているアナログ同期信号のタイミング概念とは異なり、全世界で共通的に扱えることが利点であり、これを使うことで非同期、同期の管理概念から解消されることが大きな改革に繋がっています。
今回のコラムでは、PTPやブラックバーストシンク(ベースバンドの基準同期)で、共通概念となっている同期とは何なのか?その普遍的要素を確認してみたいと思います。
カメラ映像をモニターに映して見る、この行為では同期という概念がユーザーに見えませんが、もう少しシステマチックに見ると理解できます。分かりやすく言えば、どのようにして映像は切り替わるのか?あるいは、放送映像はどのようにして制作されるのか?を知ることによって同期の概念が見えてきます。
図1は、オンエア放送映像が切り替わっていく様子を時間軸上に示したものです。オンエアする直前の映像(ネクスト映像)を選択しておき、送出トリガーを掛けることでネクスト映像がオンエア映像にせり上がって行く、いわゆる映像送出の仕組みです。当たり前に映像を切り替えていますが、ここに同期の要素が含まれています。

図1.放送映像の送出

映像は、水平方向、垂直方向の順次走査によって画面上の画素を光らせていますので、各映像信号もそれぞれ水平、垂直の走査シーケンスを保持しており、これを連続することで映像伝送しています。
図2は、映像信号の水平、垂直同期を示したものです。

図2.映像信号の1フレーム構造

この図に示す通り、1080p/59.94p映像には規定されている垂直ブランキング期間45本、映像有効領域1080本という順次走査条件があります。これは、切り替わった映像においても、このシーケンスを失うことなく継続する必然性を示しており、乱れのない映像切り替えを行うためには、同期の連続性が重要であることが分かります。
図3は、マルチカメラシステムを放送映像として送出していく系統図を示したものですが、これを見るとどうやって各映像信号のタイミングを合わせて切り替え送出しているのかが分かります。

図3.マルチカメラシステムの送出系統み

解説
1.カメラは基準同期信号を受けて、これと同じタイミングで映像出力するように制御しています。
2.マルチフォーマット出力する場合でも相互のタイミング相関規定に従っています。1080p/59.94と1080p/23.98については、10フレーム:4フレームの相関を基準同期信号からつくり出しています。
3.カメラ出力信号は、伝送、分配、ルーティング、変換などによって、それぞれ映像制作システムに入力するタイミングが異なってしまいます。
4.位相差が生じた映像信号のタイミングを吸収し、自動的に位相を合わせるAVDL(Auto Video Delay Line)機能が役立っています。
5.AVDLを通すことによって、その後の映像切替において同期の連続性を保証するものになっています。

ここまで、映像位相を合わせることで初めて映像がきれいに乱れなく切り替わる、つまり放送映像制作が可能になることを説明しました。図3に示す通り、各機器に基準同期信号を通知し、これを基に信号のタイミングを制御することが重要であることが分かります。
それでは、システム側で示される自動位相吸収機能「AVDL」とはいったい何なのか?これについてご紹介することで、システムにおける同期の仕組みを理解してみましょう。
図4にそのブロック図を示します。位相吸収機能のため、回路としてはメモリー(First in First outメモリー)が深さ5ライン分備わっているだけです。フレーム分備わっていないため、フレームシンクロナイザーと対比してラインシンクロナイザーとも言われます。(メモリーの深さは当社の例です)
動きとしては、入力信号のタイミングで書き込み、システム同期のタイミングで読み出す、というシンプルなものですが、入力位相に応じて書き込むことで、遅延量は入力位相の早い遅いに連動して変化するため、システムタイミングに自動調整することができ、読み出された映像信号は全て位相が合っていることになります。

図4.AVDLのブロック図

これをタイミングで解説したものが図5になります。小さいメモリー領域内で書いて読むという手順を踏むため、このタイミングに信号が存在していることが条件にもなり、万能ではありません。図3で示した通り、伝送、分配、ルーティング、変換などの経路の違いによって変動する遅延量を吸収することが目的であるため、一定の吸収範囲に制限しており、同期信号が掛かっている信号においては、多くが吸収できることを想定したものです。

図5.AVDLのタイミング解説

以上、同期信号の必要性について、映像制作の視点でご紹介しました。この中には機器の入力段に備わっているAVDL機能が同期の役割を果たしていること、システムには欠かせない基本機能であることが理解できたと思います。
位相吸収については、AVDLの他にフレームシンクロナイザー(FS)もありますが、非同期信号を同期信号に吸収するという概念で覚えられている方も多いのではないかと思います。こちらの機能についてもどこかでご紹介できたらと思います。

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