2021年7月1日Ikegami Engineer Talks (FPU編)- Vol.4

進化する”Ikegamiらしさ”

関塚
1987年入社。FPU調整・検査、マーケティングを経験し現在は設計部門にて製品デモ、開発を担当。
【モットー】
・ユーザーのこだわりへの理解
・池上の強みでもある”こだわり”のある製品、品質。更に、ユーザー様の”こだわり”を理解しより良い製品を目指す。

富樫
2008年に入社。以降FPUの調整・検査に従事。

【モットー】
・仕事は楽しく、まじめに。

高坂
2014年に入社。以降FPUの設計業務に従事。

【モットー】
・何事にも興味を持って取り組む。


機能拡充しつつ、サイズは従来機の半分

― 前回のインタビューで、PF-900は様々なチャレンジを経て誕生した”新しい時代を切り拓くFPU”だというお話を伺いました。実際にお客様からはどのような反応をいただいているのでしょうか?

高坂:
展示会や内覧会、デモに行くと、まず高周波部が小さくなったことに皆さん驚いています。また、筐体デザインを始め、画面や表示のスタイルを一新したため「今までのIkegamiと全然違う!」というポジティブな声もたくさん頂きます。4K伝送やIP伝送といった新機能が増えたにも拘らず、高周波部の筐体サイズは従来機の半分、RF性能は従来機と同様といった特徴もインパクトが強いと思っています。


ラック実装時、従来機器では5U必要だったが、PF-900では4Uに。
可搬時の利便性に加え、ラック設置時にはスペースを有効活用できる。

富樫:
実際に高周波部を鉄塔に取り付ける協力会社様からの評判も非常に良いです。また、検査課の課員が鉄塔に取り付けにいくこともあるので、Ikegami社員の中では検査課員が一番喜んでいると思います。

―  小型軽量化を追求することは、安定性・信頼性に繋がるというお話も伺いました。この点についての反響もあるのでしょうか?

関塚:
従来以上に安定して使えそうであるとの評価をいただいています。FPUは“発熱”というポイントもメーカー間での差が大きい製品です。PF-900は標準型FPUでは業界で最も小さいながら、発熱の処理がうまく行えています。

―  物理的に小さくなっても熱の問題を回避している、というのは技術力が光る部分ですね。どのように問題をクリアしたのでしょうか?


高坂:
筐体を小型化するにあたり、消費電力を抑える必要がありました。送信高周波部では、最も消費電力が大きいパワーアンプに最新の高効率のデバイスを採用し、歪み補償技術を組み合わせることで、従来機より10%ほど消費電力を抑えることができました。

―   機器が小さくなるにつれて出てくる制約などはあるのでしょうか?

富樫:
 
高周波部の小型化によって、何か犠牲にしたものあるのでは?と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。過去の製品と比較して、性能だけではなく使い勝手も向上しています。例えば、高周波部前面の表示がドットマトリックス表示となり、とても見やすくなりました。FPUは屋外でも使用する装置なので、屋外での視認性が上がっています。


現場と繋がる細部へのこだわり

―   機能・性能だけではなく「運用しやすい」というのは、長く使っていく上で重要ですね。

富樫:
そうですね。製品開発には、IkegamiのFPUを実際に使用していただいているお客様の声が反映されています。
 
例えば、『FPU本体で受信支援画面を確認したい』というお客様からの声がありました。FPU受信機の受信支援画面を見るには、モニタを用意する必要があったためです。FPU本体にLCD画面が搭載されたPP-60発売以降、同様の意見を多く聞くようになりました。PF-900ではお客様から頂いた意見を反映させ、受信制御部のLCD画面に受信支援画面を表示できるようになりました。お客様が運用時に使用する機材を減らすことに寄与出来たと思います。
また、直接いただいたご意見だけではなく、お客様の運用スタイルから得たヒントも製品に盛り込まれています。細かいところですが、制御部を段積み出来るようになった点も過去の製品から改善された箇所です。過去の製品では、制御部を段積みすると制御部の取っ手が上に積まれた制御部の底面にあたり、斜めになっていました。お客様は何も仰ってはいませんでしたが、実際の中継現場でその姿を見た時に改善したいと感じました。


―   実際の運用現場を知らないと、中々気付かない点ですね。意外と知られていないけど、運用に関わるこだわりポイント、というのもありそうですね。


 
富樫:
意外と知られていないのが、制御部の背面についてです。PF-900は本体色の黒ベースに対し、制御部背面の塗装が白くなっています。私自身、初めて見た時は疑問に思いました。実際に使用するまではどうしてか?というのは気付きにくいのですが、機構設計のこだわりを感じる部分です。FPUの制御部が設置されるラック内は、暗いことが多いのです。そのため、背面の塗装が白いことで暗い環境でもコネクタ名称が見やすくなります。お客様からも『ラック内でも見やすい!』というご感想をいただいています。

―   先ほど屋外での視認性についてのお話ありましたが、設置する場所や、そこでどのようなユーザー行動が発生するかを隅々まで考えられているとは、これまで気付きませんでした。 FPUは放送だけではなく様々なアプリケーションで使われていますし、お客様によって運用スタイルも違いますよね。お客様によって意見が180度違うということもあるかと思います。全てを製品に盛り込むことができないと思いますが、どのように製品づくりに反映させているのでしょうか?

 
高坂:
展示会やデモでは、様々なお客様の意見を聞きます。特に、PF-900のように新機能が増えたり、操作性が変わった部分もあったりすると、戸惑いや『従来機のように高周波部はメーターがついていたほうが良かった』という声も頂き、お客様のいろんなニーズに応えていくのは難しいと思った瞬間もありました。一方で、運用や使用方法に違いはあるものの、装置に対する要望意見は共通項も多いと感じます。例えばPF-900でも設定項目が従来機より増えた為、分かりやすい操作性を実現するのが要望意見でも挙がっており、課題となっていました。LCD画面からでも直感的に操作をすることができますが、従来のFPUにもあったスイッチを搭載することで、より使いやすくなったと感じています。全ての意見を取り入れることは難しい部分もありますが、共通した意見をまずは反映させていくようにしています。


―   多様な意見から共通項を見出していくには「高い技術力」だけではなく、言語化されていない物事から本質を見抜く力も求められそうですね。長く使っていただく製品だからこそ、現場でより良い道具となるように隅々までこだわりがつまっている、ということですね。

富樫:
モノづくりには品質確保も重要な要素です。どんなに素晴らしい機能があっても、また、カタログスペックが良くても、故障が多くて安心して使えない装置はお客様の満足度は高くなりません。現場のお客様から頂くご意見、そして現場で見てきたことを活かし、製品の品質確保に努めています。


設計から出荷前検査まで、徹底した“安定性”へのアプローチ

―   FPUは過酷な状況下での運用も多いと思います。お客様はどういった点を気にされるのでしょうか?

高坂:
 
高周波部は自然環境に左右されやすい場所に設置されることが多く、防水面や炎天下時に使用した場合に耐えられるかを気にされる方が多いです。FPUは防滴対応ではありますが、悪天候時には防水カバーをつけて運用することを推奨しています。カバーをつけることにより機器の熱を心配される方もいらっしゃいますので、放熱に関しては設計を行ううえでとても重要だと感じています。

富樫:
そうですね、屋外での安定性を気にするお客様は多いです。立会検査の時にお客様から真夏の炎天下や、真冬の起動時の安定性について質問を受けることが多々あります。Ikegamiでは開発段階から高温・低温の品質を考慮しているだけではなく、出荷する全ての装置に対して温度試験を実施しています。また、FPUは24時間電源を切らずに運用し続ける環境もあるので、出荷までにヒートラン時間を十分確保しています。出荷までにヒートランをしっかり行うことで、出荷後の初期不良を減らすことにもつなげています。

―   小型軽量化とすることが安定性にも繋がるというお話がありましたが、設計段階から出荷前検査まで様々な工夫でFPUの安定性向上に取り組んでいるのですね。

富樫:
 
先ほどお話した、制御部のLCD画面で受信支援画面もそのひとつです。FPUは無線を用いて映像・音声を伝送する装置なので、映像・音声を送り出す送信機と受け取る受信機がありますが、運用中に電波がどのような状態で伝送されているかを目で見ることは出来ません。従って、運用中に受信機を担当するお客様は、現在どのような電波を受信しているかの確認が必要です。伝送品質を確保するために、受信支援というのは重要なポイントです。受信支援画面では、コンスタレーションや受信電界だけでなく、受信している映像がインポーズされていたり、エラーの有無が表示されているので、伝送状態に異常が無いかを認識するための情報が、1つの画面で得られるように工夫しています。


ユーザーになれないからこそ、とことん向き合う

―   良いモノづくりのためにはユーザーがどのような運用をしているのか「お客様を知る」ことが重要だと改めて感じました。一方で、FPUの電波を出すには免許が必要ですし、メーカーとはいえ電波を出して実際に使ってみるというわけにはいかないかと思います。実際に現場でどのようなことが起きているのか、ユーザー理解を深めるというのも難しそうですね。
高坂:
デモをするためにお客様の場所に伺うこともあるのですが、展示会より一人一人のお客様とお話する時間が長い為、より多くの意見が聞けると感じています。お客様同士で『あの時の運用はこうだった』など話をされているのを聞き、以前より理解を深めることができるようになりました。

 
富樫:
私はFPUの修理も行っているのですが、修理時にもお客様とのコミュニケーションは欠かせません。免許が必要なFPUの送信機は、メーカーで代替機を準備することは原則できません。そのため、お客様で修理代替を準備していただく必要があります。従って、修理を行っているメンバーは、可能な限り短期間で修理品が返却できるように心がけています。しかし、障害の発生頻度が低い場合等、修理品を返却するのに時間を要するケースがあります。常時通電した状態で数日に1回しか障害が発生しないようなケースもあり、原因を特定するのに非常に時間がかかることもあります。そのようなケースでは障害が発生した時の状況や運用方法、周囲の環境等をお客様から細かく聞かせていただき、障害発生時の状況に近い環境を工場内で再現して、原因究明を行うこともあります。

―   特に検査を担当しているとお客様にも近い立場だと思います。何か心掛けていることはありますか?

富樫:
検査課の使命は、安心して使っていただける装置をお客様に届けることにあると思います。立会検査ではお客様にしっかりと装置を見ていただきますし、使用方法も覚えていただきます。また、運用方法はお客様毎に異なりますので、立会検査ではお客様の要望に対して可能な限り対応しています。立会検査を行うことでIkegamiの品質に対するこだわりを理解していただけるように心がけています。

―   培ってきた経験と技術に加え、ユーザーになれないからこそ、お客様とのコミュニケーションがIkegamiのソリューションを生み出しているのかもしれないですね。性能や機能だけでは安定性も運用性も上がらないというお話もありましたが、本当に幅広い知識と経験がないとFPUという製品を生み出すのは難しそうだなと感じます。

関塚:
 
取扱う信号も近年SD、HD、4K、8Kと発展しており、更に音声やIPにも対応するため、無線知識だけでは製品が成り立ちません。様々な発展をしていく信号を取扱い、それらの伝送品質についても評価や設定、調整を行うなどの多くの知識を必要とします。また、大きく変化している製品と共に、開発スタイルも変化してきていますね。近年FPUで扱う情報も多くなり複雑化しています。本体の液晶表示画面やリモート制御を含むソフトウエア比率がより多くなったのがPF-900です。常に疑問、問題点を話し合って開発するというのが重要になっています。

―   お客様とのコミュニケーションだけではなく、チーム内でのコミュニケーションもIkegamiのモノづくりには欠かせないポイントになっている、ということですね。

高坂:
開発チームメンバーは各々がその分野の専門知識を持っていて、分からないことがあってもその人に聞けば教えてくれるため、とても心強いです。以前から、設計部門だけでなく生産や検査部門からの意見や要望も募り設計作業を行っていましたが、最近は会議室で行うレビュー以外でも相談や議論が活発になっていると感じます。

富樫:
電気設計、ソフト設計、機構設計、調整検査、製造の各部門が、近くにいてコミュニケーションが取りやすいことはIkegamiの大きな強みです。開発段階で発生した不具合も各部門が協力して、装置を目の前に置いて対策を検討出来るので、問題解決は早いと感じます。


進化していく、Ikegamiらしさ

―   「今までのIkegamiと全然違う!」という反応をお客様からいただいているとのことでしたが、エンジニアとして現在感じる”Ikegamiらしさ”とはどのようなものでしょうか?

富樫:
愚直なほど真面目。それがIkegamiらしさではないでしょうか。そういった所が、モノづくりやお客様対応に表れているように思います。

高坂:
トラブル時の対応や、それぞれのニーズに沿った仕様を提案できるのがIkegamiらしさだと思っています。

―   製品、そして開発スタイルは、これからも世の中の状況とともに進化させしていくかと思います。今後、どのような”Ikegamiらしさ”を目指したいですか?

高坂:
今までのIkegamiらしさを残しつつ、常に挑戦し続けることで新しいIkegamiらしさがでてくると思っています。

富樫:
IkegamiのFPUは機能や性能だけでなく、品質も良いね!と、お客様に言っていただける、そんなIkegamiらしさを目指していきたいです。FPUは放送局だけでなく、警察や消防等の官公庁でも使用されており、社会インフラを支える装置だと認識しています。しかしながらFPUを使用していただいているお客様以外の認知度は非常に低く、初めてFPUを操作することになったお客様は扱いにくいのではないかと思います。機能と性能は向上しても操作しやすい、その点に対する進化は今後も必要だと思います。


顧客と装置の懸け橋として、進化を続けていく

―   最後に、今後目指したいことを教えてください。

 
高坂:
私はお客様との仕様打ち合わせや、展示会やデモなどに行って実際に装置について説明をする機会が多いのですが、それでもまだまだ実際の運用を始め装置の細かい仕様など、知らないことが沢山あります。 これからもっと経験を積んで、お客様にこの装置を使ってみたいと思っていただける製品づくりや提案ができるようになりたいです。

富樫:
良い機能であっても、使い勝手が悪いと、お客様に使用してもらえません。また、性能が良い装置であっても、操作が難しいとお客様の使用頻度は徐々に減っていきます。検査課は納品後も、修理や現地工事の際にお客様の声を伺う機会は多いです。そういった声を吸い上げて、製品に反映していくことも検査課の役割だと思います。設計部門が苦労して製品化した装置に対して、十分性能を引き出し、お客様がストレスなく運用していただける、そんな装置をお客様に届けていきたいです。

関塚:
IoT時代の中、当社の無線機器についても、装置と顧客、メーカーを繋ぎより良いサービスとなる為のモノへと変化をさせる必要が出てきています。故障、設定、制御、ファームアップ等などをメーカーから行えるなど、今まで以上に出荷した製品に対して継続的に出来るサービスを考え、更には利用状況の把握の為に装置利用状況などのデータを収集し次世代製品にも役立てるなどを目指したいと思います。伝送装置に限らず、それらの新たなサービスを可能とするためにも、高度化され続けている無線伝送技術の獲得が必要となってきます。



IkegamiのFPUを生み出すEngineerの声を、4回にわたりお届けしました。お楽しみいただけましたでしょうか?
今後も、お客様と共にチャレンジを続けてまいります。これからもIkegamiのFPUに、ご期待ください!