2018年11月06日Ikegami Engineer Talks - Vol.5

「お客様の夢を形にする企業であり続けたい。」 それが「映像技術のプロ」であり続けるIkegamiの願いだ。 IP&T(Image:撮像、Process:画像処理、Transmission:伝送)にフォーカスして映像技術を探求し続けるIkegamiは、どのようなこだわりを持っているのか。Ikegamiのエンジニアインタビューをご紹介します。


 
伝統を引き継いだこだわりと、新たなチャレンジが詰まったUHK-430。最近は、放送局以外にも活躍の場を広げている。 その背景にはIkegamiで活躍する、多くの若手エンジニアがいた。これから担う世代が見るIkegamiとは。UHK-430の設計に携わった、青木・谷口・會田が語る。
 

青木
放送カメラシステムから、宇宙、医療、検査、セキュリティなど映像という分野 で幅広く事業を手がけている会社で、私もものづくりを通じ社会に貢献したいという想いで2015年に入社。入社後は放送用カメラのハードウェア担当として設計・開発に従事。
【モットー】
・「誠実に、丁寧に」。一つ一つの仕事を誠実・丁寧にこなしていけるように頑張ります。
谷口
2013年入社以来、放送用カメラの電気回路設計を担当。 子どもの頃からTVが好きなこともあり、放送用カメラという最終製品の設計に携わり、ゼロからモノができあがっていく今の仕事に楽しみを感じている。

【モットー】
・目の前にある物事に対して全力で取り組めば、自ずと成長し、人生が豊かになると信じています。


會田
学生時代、放送局で働いていた経験のある教授から「ユーザーの要望によく応えてくれるメーカー」という評判を聞いており、自分もお客様に貢献できるものづくりがしたいという想いで2011年に入社。 映像処理系統をメインに、放送用カメラのプロセッサおよび基板の開発設計に携わっている。

【モットー】
・まずはやってみる。だめなら反省してまたやってみる。


1画素1画素に向き合う

 
― 世界中のテレビ放送業界を技術で支えるメーカーとして、長年お客様に愛し続けていただいているIkegamiですが、どのようなところに伝統を感じますか?

谷口:
“映像品質の追求“と”ユーザーに寄り添う“というところにIkegamiの伝統を感じます。

― 確かにIkegamiといえば「映像の職人」というイメージがありますね。

青木:
配属当時、モニタに目を凝らせながら「うーん」と唸っているベテラン技術者の姿がとても印象的でした。 どこが気になっているのか教えてもらったのですが、その部分を見ても何が違うのか良く分からなかった覚えがあります。素人ではよっぽど目を凝らさなければ分からない部分でも、1画素1画素に全力で向き合っている姿勢がIkegamiの良い伝統だなと感じます。

 
谷口:
映像品質への妥協を許さない、まさに「番人」と呼ぶに相応しいような人が社内にいて、その番人がIkegamiのカメラの映像品質を守っています。黒の出方や色の再現性について、本当に目が肥えていると感じます。私たちも早くその域に達したいですね。

― ユーザーに寄り添う、小回りがきくというイメージもIkegamiにはあります。

谷口:
設計者自身がお客様に直接お話を聞く機会が多く、お客様の声が製品に反映しやすい仕組みができています。今の放送用システムカメラも、長年私たちが放送局様と密に情報交換し、お客様の声が積み重なって今の形に出来上がっていると感じます。

 
青木:
細かい仕様に関しても、これまでのVOC (Voice of Customer)の確認や、日々お客様とやり取りをしているチームへのヒアリングなどを実施し、お客様重視の仕様検討を行っています。

― 固定的なアイデアにならないための部署を横断したチームワークというのも、Ikegamiの強さを生み出しているのですね。


映像品質を追求する上での伝統を踏襲

― 放送用システムカメラの新しい歴史の1ページには、常にIkegami がいた印象があります。 設計者としてUHK-430 の開発に携わった皆さんから見て、伝統を引き継いでこだわっている点について教えてください。

谷口:
4K HDR化するにあたり、“非圧縮“というのはこだわったポイントです。放送用4Kカメラの場合、CCU(カメラコントロールユニット)側でも本線の映像処理を行っているため、カメラ-CCU間でデータ量を圧縮して減らしてしまうと、その圧縮によって映像の劣化が多少なりともでてきてしまいます。また、圧縮後の映像に処理をするか、デコードして映像処理をするという必要も出てきてしまいます。そのため、Full 4Kの映像処理がCCU側でもできるように、カメラ-CCU間のデータ転送レートを40Gbpsもの広帯域とし、画質を維持しています。

 
會田:
お客様目線というのは、UHK-430でもしっかりと引き継いでいます。 カメラマンの目といえる、ビューファインダーに表示するフォーカスアシスト機能にはこだわりました。 HDのカメラにもフォーカスアシスト機能は搭載していましたが、ディテールを抽出する際のフィルタ係数や処理内容を実際に動作させながら見直し、納得出来るレベルまで仕上げました。お客様からもご好評いただいており、こだわった甲斐があったと思っています。


Ikegamiの新たなチャレンジ

― UHK-430は新しくUnicam XEシリーズとなりましたね。UHK-430では、どのような新たなチャレンジをしましたか?

 
谷口:
放送局では今年本放送開始となる4K放送への対応と、既存のHD放送の維持・継続が必要です。そのための課題の1つとして、サイマル出力への対応がありました。カメラシステムとしては、4K/HD両方の出力をする必要がある一方、これまでのスタッフの方々の人数を増やすことなく、両方の放送に対応しなければいけません。この課題に対して、いろいろとお客様にヒアリングも行い、1つのCCUで4KとHD(BT2020/BT709)を別系統で処理し、それぞれに対してHDRの処理を独立して持たせました。これにより、技術転換期にもシームレスに4Kへ移行していけるシステムにしました。

青木:
 
12G-SDI採用も、新たなチャレンジでした。4K映像を伝送するためには、3G-SDI対応のコネクタ/ケーブルの場合、伝送のために4本のケーブルを使用しなければなりません。UHK-430のCCUは、12G-SDIを用いて4K映像を1本のケーブルで伝送可能です。ケーブルがこれまでの4倍となり煩雑になることもないですし、トラブル発生時の様々なリスクの低減にも繋がります。 この12G-SDIは、今までの映像信号よりも高速の伝送になるので、基板の配線から十分に気を遣って設計をする必要がありました。私が12G伝送の試作基板を担当したのは開発課に配属されて間もない頃で、開発・設計業務について右も左も分からない状態でした。しかし周りのフォローもあり、何とか形に出来た思い入れのある基板です。

會田:
デバイスの処理能力を上げるというのも、今回新たなチャレンジでした。4K信号は情報量が多いため、これまでと同じように処理しようとすると、デバイスが耐え切れなくなってしまいます。情報量の多いものを遅延量少なく出すというのは、放送カメラとして大事です。無圧縮で処理をするために、処理能力を上げる工夫を施しました。 前回AXIIのこだわりをご紹介していますが、UHK-430に搭載しているAXIIは画期的とも言えるほどの低消費電力を実現しています。AXIIを搭載したHDカメラは、ファン無しでも大丈夫なくらいです。UHK-430も、ファンは1つだけです。ファンを減らすことは運用中のトラブル回避や静音性の向上にも繋がりますし、消費電力を下げることは熱に関するトラブル回避にも繋がります。

他にも様々なチャレンジをしていますが、それらができたのは、サプライヤーや基板業者の方にもご尽力いただいたお陰です。私たちだけの力だけありません。様々なメーカーから良いモノを集め、選び抜かれたモノでものづくりをしているというのもIkegamiの特徴です。そういったメーカーの方と何度もやり取りをしながら、つくり上げました。

― 部品ひとつひとつ、その道のプロが結集してつくり上げられているのですね。


お客様の想いを実現するために

― UHK-430は、ソーシャルネットワークの歴史の中で初めてのライブマルチカメラショーとして登場した「Facebook Live」の番組で使用されたり、今世界中で話題のe-Sportsの番組で使用されたりと活躍の場を広げています。 伝統と新しいものを上手く融合させ、新たなフィールドでも受け入れられているのが印象的です。
Ikegamiのエンジニアとして、今後技術を通してどのように放送・映像業界を支えていきたいかについて教えてください。

 
會田:
人々の趣味や、見るコンテンツは多様化してきています。また、映像の見られ方も今後変わっていくでしょう。 どのような放送をしたいのか、お客様は視聴者にどのようなことを知ってもらいたいのか、コンテンツのどこを見て欲しいのか…そういった制作側の意図というのは、自分達が知らないところでもあると思います。その想いを実現していくためにも、お客様を知るということが大事だと思っています。 それから、インターネット上では様々な意見を見かけますが、映像を綺麗にみたいという需要はあると感じています。例えば、ブルーレイを一度見ると、DVDには戻れないですよね。どれだけ綺麗な映像を見るきっかけがつくれるかも重要だと思うので、メーカーとして何が手伝えるかを考えていきたいです。 また、時代の変化に合わせていくと多機能化が進むと思いますが、それらを簡単に見せる、シンプルに使っていけるような取り組みをしていきたいです。”難しいものを簡単に見せる”というのは難しいですが、私たち自身がユーザーの目線になってどんどんカメラを触ったり、好きになったりしていくことでチャレンジしていきたいです。 今の世の中では”スペックシートだけでは見えない価値”というのが増えています。それは、私たちの生み出すカメラについても同じです。

 
谷口:
これまでは主に放送局様を中心に納めさせていただいていましたが、そのベースも踏襲しつつ、多くのお客様にも使用していただけるようにしていきたいです。放送用カメラとしてのベースである安定性と堅牢性、そしてIkegamiとしての“画質の良さ”を守りながら、お客様が現在不便に思っていることを解消できるよう、最新技術に注視していきたいですね。

青木:
Ikegamiのカメラはお客様がいたからこそ、ここまで成長してきました。これからもお客様とお話させていただく機会があると思いますが、誤解なくお客様が求めていることを受け止められるようにしたいです。受け取り方によってはお客様が求めているものとは全く違うものが出来上がってしまいます。お客様が真に求めているものを引き出し、技術の面で支えていきたいです。


ミレニアル世代が見る、これからの世界

― 最新技術という話が出ましたが、個人的に気になっている技術や、実現したい理想像というのはありますか?

會田:
究極ですが、今見ている景色の輝度をそのまま表現し、本当にそこにいるかのような感覚を実現したいですね。その感覚を、テレビという窓を通して見られるようになるのが理想です。どこでもドアは作れないですが、そういった体験を提供できるようになりたいです。

― VRのようなイメージですか?

會田:
VRは自分ひとりだけの世界ですが、テレビはリビングで家族みんなと観ることができます。その時間を家族で共有できるのがテレビの魅力です。”共有する”ということは、今の世界で求められています。その映像を見て感動したという経験を家族でも共有してもらいたいので、エンジニアとして”共有する場”を提供したいですね。 「何故放送するか?」と問いを立てると、作り手がそれを見てもらいたいからというシンプルな答えがあるのではないかと思っています。その想いをより多くの人に共有してもらいたいので、作り手の意図が最大限伝わるような映像を実現していくのが理想です。

― 最後に、Engineer Talksを読んでくださっている皆さまにメッセージをお願いします。

會田:
 
スペックシートだけでは見えない魅力を、これまでのEngineer Talksでご紹介してきました。IkegamiのUHK-430に込めた熱意は感じていただけたと思います。ぜひ実際にカメラを触って、その熱意を感じていただけたら幸いです。

谷口:
目の肥えたプロの方たちが納得して私たちのカメラを選んでいただけるように、プロの意見を多く吸収していき、お客様と一緒に放送業界、映像業界を盛り上げるお手伝いができたらと思っています。

青木:
プロに貢献するプロとして、お客様が真に求めるものを創り出せる技術者を目指して、日々勉強していきたいと思います。


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バックナンバー

  • Vol.1 ”放送用システムカメラ” について
  • Vol.2 ”こだわりの機構設計”について  
  • Vol.3 ”多様な運用に寄り添うソフトウエア”について   
  • Vol.4 ”次世代高速ビデオプロセッサエンジン AXII”について 
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